大江戸妖怪かわら版 2 異界より落ち来る者あり 其之二/香月日輪
ヒトの目で綴った魔都見物記「大江戸紹介録」が評判を呼び、大首の親方も認めるかわら版屋の書き手となった雀。ここで生き直すんだ――元いた世界のすべてが消えた。そして憎しみも去った。いつの日か雀が、異界を、そして親を恋しく思う日は来るのか。雀の過去が明らかになる「異界より落ち来る者あり」後編。
さっそく読みました!
大江戸妖怪かわら版。
1巻発売時にいっぺんに発売してほしかったなぁ、と思いました。
一気に読んで、設定を把握してしまいたかったです。
今回はあらすじにもある通り、主人公・雀が「雀」になる前の出来事も描かれています。
途中で時間軸ががっつり飛びます。
【子ども、異界を歩く】から【雀、かわら版屋になる】までが1巻の前日譚。
異界・大江戸に落ちてしばらくしてから物語は始まります。
元いた世界では荒れに荒れていた子どもが、大江戸の住人たちと触れあい、自分自身で金を稼ぐことを知り大江戸に住み着くことを決意します。
雀が「雀」と名付けられる前、大江戸に落ちる前の話も少しされているですが、やっぱりぼやけてるというかわざと焦点をあてないようにしているのだな、と。
子どもは自身の過去をあまり語りたくない訳ですから、仕方のないことなんでしょうけど。
必要とされていない子ども。
仕方なく産み落とされて仕方なく育てられた子ども。
読んでいて
妖アパのクリを思い出しました。
クリは仕方なく産み落とされて育てられることを放棄されていました。
クリが曲がりなりにもあそこまで成長できたのはシロのおかげだった訳ですよね。
で、子どもはそれとは少し違っていて。
仕方なくとはいえ育てられたものの、親の愛情など微塵も感じられず。
子どもは、雀は、もう一人のクリといってもいいのかもしれないと思いました。
クリと似て非なる境遇だけど、どちらも救いのない親の元に生まれ、生みの親の愛情を得ることは出来なかった。けれど、幾人もの育ての親が、親代わりがいて、自分を思っていてくれる人がいる。
そんな環境の中だから、親元から離れたからこそ健やかに過ごし、成長することが出来る。そういうことなんだと思います。
そして後半の【芍薬、牡丹、百合、蘭秋】から【季節移りて木の芽吹く】は1巻より後の話ってことになるようです。
えっと、恋の話になるわけです。
先日の魔法の塔でもびっくりしたんですが、こちらもまたすっごいな、と。
香月さんは狙って同じような話題ぶつけてきたんだろうか……。
それとも偶然?
えっと、様々な種族が住む大江戸。
その中で、種族の差など大したことないらしいんです。それはまあわかりますよ?
異世界から落ちてきた雀ですら、「外国人みたいなもの」らしいので。種族の違いなど出身地の違い程度なんでしょう(同種の方が子どもが出来やすいとかはあるようですが)。
それでも種族だけでなく性別をも越えてしまうんですからすごいです。
まあ、大江戸に限らず、江戸でも当時は男色ありだったんだからそう驚くことでもないんでしょうけど。
1巻でお小枝ちゃんを連れた雀に「お前ぇが産んだのか」と声がかかっていましたよね。
1巻を読んだ当時、雀の外見が可愛らしいもので女の子と勘違いされている、あるいはからかわれている程度の話だと思っていたんです。
が、実際はそうじゃなくって。
大江戸では雀(男)でも子どもが産めちゃうらしいです。
力の強いものが力を注ぐことで行為なしでも同姓でもOKってことらしいのです。
いやー、すごいですよね。
「力の強いもの」には魔人も入るんだと思うのですが、百雷の話題からして魔人だからすべてのものがはらませることが出来るわけではなさそう。
でも、鬼火の旦那は出来そう(笑)
大江戸が性差に拘らないのは、オスメスいるもの、両性のもの、性がないもの、分裂していくものなどそういう多種多様の種族がいるからこそってのもあるんでしょうね。
雀が親を恋しがれるようになるということは雀が成長したってことなんでしょうが、それには痛みも伴いそうで。
痛みがあるからこそ成長が実感できるのかもしれませんけど、もともと可哀想な子だからこれ以上つらい目にあわせないで欲しいなとも思うわけです。
雀には幸せになってほしいなと思いました。
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