同じクラスに何かの主人公がいる/昆布山葵
そいつは特殊能力を駆使して怪人と戦うヒーロー……みたいだけどツッコんだら負けだ。
こうして僕こと二宮は、主人公にとって唯一人の"理解者"になるのだった――ってそうはさせるか!
同じクラスの神宮寺は、何かの主人公らしい。授業中に突然「なっ!?このエネルギーは……!?」と叫んで教室を飛び出し、次の日は包帯ぐるぐる巻き。しかもその翌日には大怪我がすっかり完治するときた。
たぶん世界の平和か何かを守ってるんだろうけど、モブの僕には知ったこっちゃない。触らぬ主人公に祟りなし――のはずが、「なぁ二宮、ちょっといいか?」アイツと<友達>になった途端、非日常が僕の平凡な毎日を容赦なく浸食してきて!?
本が好き!を通じて、出版社様から頂戴しました。
最近、なんだかなろう系が多い印象です。
物語の語り手はタイトルの通り、クラスメイトの神宮寺が主人公だと信じてやまない二宮くん。
彼が物語の予定調和やら様式美やらにツッコミをいれながら、世界を受け入れていくお話。
ライトノベルや漫画を読みなれている人からすると二宮くんの講釈は確かにあるあるネタ。
思わずクスリとしてしまいます。
個人的に笑ったのは、ヒロインの登場シーン(2日目)とEDが流れるところ、そして頑なに敵キャラの正体を信じようとしない主人公を説得するところ、かな。
二宮くんだけが、なぜか世界がチープな物語だとわかっていて、『作者の意思』に逆らうことが出来るわけです。
主人公はそんなことに気づきもせず怪人と戦い、二宮くんを厨二病だと思うし、ヒロインは『作者の意思』に逆らってひどいめにあっているというなんとも温度差が激しい。
まあ、私が二宮くんの特性を知った時に思ったのは、「世の中には巻き込まれ主人公というものがあってだな」と「やだー明らかに語り部がもう一人の主人公ってやつじゃないですかー」だったんですけども。
主人公がボケ倒す系なのでツッコミ役がメインになるってのも割とあるあるだよな、と思いながら読み進めていきました。
ちょっと消化不良感も否めないです。
『作者』の存在が仄めかされ、二宮くんが思い通りにならないことにいらだちを覚えている様子がありました。
桜子さんの推測によると、彼はモブなんかではなくもっと重要な位置づけのキャラクターとして産み出されたのではないかと。
私もそれが自然だと思うのです。上述したとおりのキャラ立ちですもの。
終盤で二宮くんが出会った少女が作者だとしても、なぜバグのようなことが起きたのかが不明。
そして、この世界はいったい何だったのか。
次章へのヘッタクソな導入で物語は終わりましたが、彼らの今後はどうなっていくんでしょうね。
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