孔雀狂想曲/北森鴻
東京は下北沢の片隅にある骨董品屋・雅蘭堂。店主の越名集治は実は相当の目利きなのだが、商売はそれほど上手くない。おかげでいつも開店休業状態。そろでも、ひとたび人々の記憶や思いのこもった骨董品をめぐって事件が起きると、抜群の鑑定眼と推理力で謎に挑む。ベトナム・ジッポー、鉱物標本の孔雀石、江戸切子――様々なモノと謎が今日も雅蘭堂を訪れる……。
傑作ミステリ連作集。
3冊目の北森鴻さんの作品になるのかな?
なのでカテゴリ作りました。
Wikipediaによるとこの作品は「蓮丈那智、香菜里屋など多くの北森作品のキャラが登場するオールスター的作品」とあるのですが、まったく気付きませんでした。
蓮丈那智シリーズも香菜里屋シリーズも読んだことあるのですが、もうだいぶ前だし、図書館で借りて読んだっきりなのですっかり忘れてしまっています。
でもどちらのシリーズを読んでいなくても楽しめると思います。
殺人事件もおこりますが、どちらかというと日常系ミステリーで、骨董品にまつわる謎を雅蘭堂店主・越名を中心に暴いていきます。
『ベトナム ジッポー・1967』
1人の少女が万引きしようとするところを止めるところからはじまります。
その少女・安積は雅蘭堂のアルバイトとしてレギュラー化するのですが、骨董の価値のわからない彼女の行動は越名さんにとっては信じられないようなことばかり。
価値がわからないって怖いですよね。だって、何十万もするようなものを3000円で売ろうとするのですから。
本編は安積の祖父の過去の傷について。
明らかにされる真実は、祖父にとって良かったのか悪かったのか。
どちらを選んでも苦しそうです。
『ジャンクカメラ・キッズ』
ジャンクカメラを使っておきる詐欺事件から発展した話。
海外旅行なんていかないので知りませんでしたが、そういう詐欺が出来るんですね。まあこれ結構前の作品なので今はもう変わっているかも知れませんが。
同業者の転落っぷりというか、越名さんを利用しようとしたことは酷いなぁ、と思う反面、止めて欲しかったのかなとも思いました。
だって、雅蘭堂の越名の頭の回転の速さは比較的有名なようですし。そう時間をかけずに気付いたと思うのですよ。
だからどこかでそういう気持ちがあったのかもなんて甘いこと考えてしまいました。
『古九谷焼幻化』
同業者に罠にはめられそうになる話。
この話同作者の狐罠とかそっちに近い気がします。
同業者同士の駆け引きとかそういうの。
こういう緊迫したやりとりって結構好きです。
『孔雀狂想曲』
鉱物標本をめぐる話。
鉱物標本にある孔雀石からのタイトルみたいです。
骨董とか絵画とかにつき物の、贋作。
科学技術の発展があるからこそ、この話みたいな事件が起きるってことなんでしょうけど、そういうことに詳しくないので読んでいると感心してしまいます。
もちろんフィクションだということはわかっていますが、それでもおもしろい。
『キリコ・キリコ』
江戸切子にまつわる幼い記憶の話。
越名さん以外の人物視点の話です。
叔母の遺品を預かっていると連絡を受けて雅蘭堂にやってきた女性視点の話。
子どものころに起きた事件の真相を越名さんが推理します。
おじいさんの心理にはなるほど、と思ってしまいました。
多分これは他に誰も生き残っていないからこそ明かされた真実だったのだろうな。
『幻・風景』
今まで知られていなかった絵画の存在を探す話。
これは私も気付きました。
なぜそういうことになったのかまでは思い当たりませんでしたが、絵画の存在については当ってました。
というか、こんな感じの話、蓮丈那智シリーズにありませんでしたっけ?
気のせいかな?
『根付け供養』
贋作根付の作成に精魂をかける職人の話。
江戸自体のものである、ってだけで価値が大きく変わってしまうってのは現代作家にとっては悔しいものかもしれませんね。
私は製作者にはなれない人間ではありますが、それでもなんとなく想像が出来る気がします。
越名さんが根付が現代作家の手によるものだと気付く理由ですが、確かに現代人にはわからないですね。
『人形転生』
焼け焦げたビスク・ドールにまつわる話。
300体のビスク・ドールってちょっと怖いだろうな、なんてどうでもいいこと思ってました。
コレクターが過去にやったことは本当に酷い。
犯人がああいう暴挙に出た理由も理解できなくもない、と思いました。
物語自体はこれからも続いていきそうな雰囲気なんですが、絶対に続くことがないというのが本当に残念です。
[0回]
COMMENT