七日間の身代金/岡嶋二人
プロデビューを目指す若き音楽家カップルの千秋と要之介。ある日、富豪の後添いとなった友人から、弟と先妻の息子が一緒に誘拐されたと相談を受ける。身代金の受け渡し場所は、どこにも逃げ場のない湘南の小島。にわか探偵と化した二人は犯人をおうが……。誘拐と密室の二重の謎に挑む、傑作青春ミステリー。
先月古本市で見つけた本です。
『岡嶋二人』って名前は徳山諄一さんと井上夢人さんの共作著名なんだとか。
井上夢人さんの
オルファクトグラムは読んだことがありますが、岡嶋二人名義の作品ははじめて読みました。
物語は、誘拐犯からのビデオレターからはじまります。
そして主人公たちの知人であり、富豪の後妻となった須磨子が身代金の受け渡しに向かうところから始まります。
あらすじを読んだ時点では『弟と先妻の息子』って言葉に弟はともかく先妻の息子は高校生くらいなんだろうな、と思っていたのですが、弟の年齢が27歳。息子の年齢が25歳。
……日本語って難しいですね。
主人公である千秋と要之介が須磨子のあとをつけ、身代金の受け渡し先まで向かいます。
身代金の受け渡し場所に指定されたのは小島。
小島に繋がる道路は1本しかなく、入り江にあるため陸海空すべてが警察官たちの目にさらされていました。
しかし、1人島に入っていった須磨子は銃に打ち抜かれ死亡。警官たちが島を捜索するものも身代金も凶器も犯人も消えてなくなっていて……。
密室ですね。しかも、密室はこれだけではないんです。
多くの死が絡み、お金の問題が絡み、愛が恨みが絡んでくる。
でも読後感は悪くないです。犯人の心象吐露で終ってしまったら鬱々としてしまいそうですが、そこで終らず、千秋と要之介のその後を匂わせるような終わり方をしたので、読後感はどちらかというと爽やかかも。
心象的にも動機的にも犯人はこの人しかいないって人物がいるんですが、その人物の絶対的なアリバイというか密室トリックが犯罪の立証を阻むんですよ。
最後、明かされる密室トリックにはすごく大胆なんですが、でも実現可能かもと納得。
正統派というか、うまく盲点をつかれた気がしました。
千秋と要之介のやりとりが読んでいて楽しかったです。
このカップルがかなり自然な感じで。男親と一人娘と娘のボーイフレンドとかそういうことになるよなー。
おもしろかったです。
シリーズ化とかしていてもいいくらい魅力的なキャラクターたちだったのですが、シリーズ化はされていません。
というか、岡嶋二人のスタンスとしてシリーズ物は書かなかったみたいですね。
岡嶋二人が共著であり、コンビを解消してしまったことからしてこれから先、千秋と要之介の活躍が描かれることはないのでしょう。
……千秋に気があるっぽかった若い刑事さんがなんか企んでそうとか思っていた自分が恥ずかしい。
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