下町不思議町物語/香月日輪
人と車と物がひしめきあう大都会の、すぐとなりにあるとは思えない昔ながらの情緒あふれる下町――不思議町。この町の一画にある正体不明の不思議な人物「師匠」のもとへ、今日も直之はすっとんでいく。
図書館で借りてきました。
このYA!フロンティアシリーズって前々から気になっていたのですが、なかなか手に取る機会がなくて。
今回、香月さんの作品をみつけて思わず借りてきてしまいました。
私、
「大江戸妖怪かわら版に妖アパの詩人が出ている」んだとずっと思っていたのですが、それって勘違いだったんですね。
正しくは
「下町不思議町物語に妖アパの古本屋が出ている」でした。
どこで変わってしまったのだろう……。
主人公は小学6年生の直之。
関西から引っ越してきて、厳格な祖母との生活に馴染めなかったんです。
なんとなくイメージは
桜蘭高校ホスト部の環のおばあさま。
嫁に対して思うことがあるから、孫に対しても辛くあたるわけですね。
そんな祖母の家に真っ直ぐ帰るのが嫌だった直之はある日下町に迷い込みます。
そこが「不思議町」。
みんながみんな行ける訳じゃない不思議なことが普通に起こる町。
そこで出会った師匠こと高塔さんのもとに通い、ゆっくり成長していく、といったところ。
雰囲気はトトロと妖アパを足して2で割った感じです。
全編通してトトロがたとえに使われているんですが、ほら、あれってはじめメイちゃんしかトトロの元にいけなかったじゃないですか。
サツキはメイちゃんが迷子になってからはじめてトトロの元にいけるようになるわけじゃないですか。
そんな感じ。
だから、はじめは直之の父・宏尚は不思議町にいけなかったんです。
直之がいなくなって、心から願ったから不思議町に行くことができたってことなんだろうなぁ。
最後のネコバスならぬネコタクには笑ってしまいました。
ああいう茶目っ気は大好きです。
古本屋さんが登場してすごくびっくりしてしまいました。
前述のとおり私勘違いして覚えていたので古本屋がでてくるとは思ってなかったのですよ。
飲んで食べて喋って子どもの成長を見守って、とやってることはアパートと変わりない。
何巻だったか忘れたんですが、古本屋がアパートに持ち込んだ江戸時代の処刑画ってこっちに流れていたんですねー。
さんまの腸の話は、るり子さんならそりゃ美味しくしちゃうでしょう!と妙に納得してしまいました(笑)
普通に対しての考え方は香月さん作品としてはいつもどおり。
周りを気にしすぎても仕方ない。偽ることなく自然な姿で。
ゆっくり成長していけばいい、と。
こういう考え方は結構好きです。
香月さんの作品って勧善懲悪じゃなくて辛いことも普通に起きるわけです。
妖アパも結構辛らつなこと言ってたりしますし、
地獄堂も結構そういう点がけっこうシビアですよね。
でも、これだけ子ども向けなら母親の件はなくてもよかったんじゃないかなーと思ってしまいました。
直之は確かに頭のいい子です。そして、強い子でもある。
でも、あの年で母親の存在を過去のものとしてしまうってのはどうなのかな、と思いました。
何も両親のよりを戻せっていいたいわけじゃないんです。
もう少し幸せというか、祖母に母性云々ってのをやるんなら、母親にもそういうのをやってほしかった。
香月さんの作品の母親ってめちゃくちゃカッコいい女性か、酷い女かのほぼ二択なんですよね。
前者は地獄堂の椎名のお母さん、後者はクリの母親が代表的かな。
魔法の塔の信久の母親は見事に後者→前者にシフトしましたけど。
それが残念。
続編が出ることがあったら母親の話はもうちょっとやってほしいなぁ。
いろいろと謎の人物であった師匠は修繕屋(リベアラー)。
鍋のふたから人間関係までなんでもなおすんだとか。
正直、この人のすごさがわかるようでわからない感じなのでもうちょっと説明してほしかったです。
続編は登場していないのかな?
ポチこと犬塚さんとか使い捨てにするにはもったいないキャラだと思うし、もうちょっと直之の成長を見てみたいと思いました。
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