摩天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿/田中芳樹
警察のお偉方が大集合しているビルで、突然出入りが不能となる異常事態が発生した!? 右往左往する上役を睥睨しつつ、従僕(?)を従えて、颯爽と登場する美女が一人。彼女こそ、警視庁きっての危険人物、薬師寺涼子警視その人だった。驚天動地の警察ホラー。
特別書き下ろし短編「さわらぬ女神にタタリなし」収録。
創竜伝の田中芳樹さんの作品です。
図書館で借りてきました。今回はじめて知ったのですが、この作品って講談社文庫で刊行されたものに短編を加えてノベルス化したものなんですね。
普通、(ハードカバー→)ノベルス→文庫、なので異色作なのかも。
この作品って読むの2、3回目だと思うのですが今回はじめて「お涼と泉田さんの関係ってハルヒとキョンに似てるかも」と思いました。
前回読んだときにはハルヒの存在を知らなかったと思うので、そう思わなかったのも無理ないと思うのですが。
頭も良く美人でお金持ちである薬師寺涼子に、ノンキャリアである泉田警部補が振り回されるっていう形が似ているな、と。
そして泉田さんも振り回されることをあんまり嫌がっていないような気がするんですよね。
この話、泉田さんの一人称で進むので、泉田さんの愚痴っぽくなっているところも少なからずあるんですが、それでも心底嫌っているわけではないんですよ。
なので、その辺もハルヒとキョンの関係性に似ているのかな、と。
お涼にハルヒのような神みたいな力はありません(多分)。でも、彼女が望む不可思議な事件が次から次へとおこることを考えるとあながちそういう力がないと言い切れないのも難しいところです。
ホラーとなってますが、あんまり怖い印象はうけませんね。どちらかというと痛快とでもいうべきかもしれません。
でも人は何十人単位で死んでるのでそういうのが嫌な人にはすすめられないかもしれません。
お涼が警察組織のオエライさんや、文化人たち相手に滅多切りにしていくさまは読んでいておもしろい。
泉田さんは基本フォローに回ってますが、それもけっこう中途半端な感じですね。
今回登場した神話の世界の化け物・石棲妖蠍(バレオロザキス)とか初めて知りました。
正直、このシリーズに登場する化け物ってマイナーすぎてこの作品以外で見たことないですね。
まあ見ても気づいてないだけなのかもしれませんが。
書き下ろし短編は短編ということもあってお涼の暴れっぷりがちょっと物足りない。
竜堂四兄弟といい、薬師寺涼子といい暴れてなんぼってところがあるので。
物語的にはシリーズ初作品ということもあり紹介的な文章も多かったです。
後半で登場した「あたしが警察で信頼してる人間はひとりだけよ」というセリフにちょっと萌えました(笑)
お涼にとって信頼できる人間というのは言うまでもなく、泉田さんなんでしょうが、本人はまだ気づいてないっぽいですね。
図書館にあるお涼シリーズってすごい中途半端にしかなく、最近の話はまったくと言っていいほど入っていないのですが、それでも何作かはあったはずなのでそのうち少しずつ借りてきたいと思います。
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