乱鴉の島/有栖川有栖
犯罪心理学者の火村英生は、友人の有栖川有栖と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。島を覆う死の気配。不可思議な連続殺人。孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、火村の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。
ちょっと久しぶりな気がする
有栖川さんの作品です。
再録本である
ビーンズ文庫版は3月に紹介してるんですけど、それを除くと
モロッコ水晶以来、2年ぶりですか。
道理で久しぶりな気がするわけです。
今回はひょんなことから事件に巻き込まれます。
下宿のばあちゃん推薦の羽休めの旅行なはずが、連絡不可能な孤島にとじこめられてしまいます。
文庫ではなくハードカバーで出たときに、図書館で借りて読んでるので実は今回読むのが2回目だったりします。
すっごくどうでもいいことは覚えてましたが、事件の真相だとかは忘れていたので楽しめました。
500ページ超のミステリなので、読み終えるまで3時間ちょっとかかりましたが、休みの日に読むにはちょうどよかったです。
今回はいわゆる孤島ミステリです。
この火村シリーズって、基本的に警察関係者から「先生好みの事件が起きましたけど来ますか?」とお誘いを受けて捜査に参加することになるってのが常なんです。
ごくたまに、アリスが呼び寄せたり、火村先生自身が事件現場に居合わせたりしますがそれらは少数といえます。
ですが、今回の舞台は陸の孤島。
携帯は圏外な上、電話線が切断され、島に持ち込まれていたはずの衛星電話は行方不明。
殺人事件が起きてある程度の時間が経過しているのにも関わらず、外部に一切連絡が取れないため警察関係者が登場しないという珍しい自体に陥っています。
島の中では火村先生とアリスは招かれざる客です。
何かしらの秘密をかかえ、島に集まった他の人々からすると予期せぬ闖入者であるわけですから、それ故に、2人は微妙な立場に立たされたりします。
ハッシーのオタク談義だとか、クローンがどうのという説明を読むのがちょっときつかったですがどうにか乗り切りました。
作中で語られる万能細胞がES細胞だったり、首相が小泉さんだったりと時代を感じましたが、特に気にせず読めました。
まあ、初期の火村シリーズは携帯が登場しなかったりするので、携帯もインターネットもポータブルのゲーム機も登場している様が描かれてるのであまり気になりませんね。
章の冒頭に引用文が掲載されているんですが、その中に
鉄腕アトム があったんです。
天馬博士がアトムを作った理由を思えばここで引用されるのもわかりますね。
作中でも語られていましたが、事件自体は取るに足らないごく普通の(といったら弊害がありますが)殺人事件です。
アリバイトリックがあるわけでもなし、死因にも不可解な点はありません。
でも、その背景にある出来事が不明なまま進んでいくだけで、こうもややこしいことになるのだな、と感心してしまいました。
久しぶりに長編ミステリを読んだ!って感覚になってなんだか満足です(笑)
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