灰色の砦 建築探偵桜井京介の事件簿/篠田真由美
19歳の冬、我等が桜井京介と深春は「輝額荘」という古い木造下宿で運命的(?)な出会いをとげた。家族的で青春の楽園のように思われた「輝額荘」。しかし住人の一人・カツが裏庭で変死したことから、若者たちの「砦」に暗い翳が忍び寄る。続いて起こる殺人事件。その背後には天才建築家・ライトの謎が?
久しぶりに篠田真由美さんの作品を読みました。
やっぱり長い! 私本を読むのは早いほうだと思うのですが、それでも4時間近くかかりました。
篠田さんの作品は休みの日じゃないと読めませんね。
今回の話は深春が蒼に過去の事件を語るという形式です。
なので、蒼の出番はほぼなし。プロローグとエピローグのみで、後は深春視点の物語です。
1995年から7年前の話。
正直そう読んだときはそこまで気にしなかったのですが、物語の後半で「昔人でなかったた人が死んだ日」とありそれでようやくこれが1988年から1989年にかけての出来事であることを実感しました。
1989年=昭和64年であり平成1年であるその年。私が生まれたのは平成1年なので、その当時の話なのかーと妙に感慨深かったです。
昭和から平成に変わるそのときだからこそ時代がどうの、と語られていたのでしょう。
今回読んで思ったこと。
なぜこんなにナチュラルにBLっぽい要素が蔓延しているのだろう、でした。
この本を読んだのは多分2回目か3回目かそれくらいだと思うのですが、以前読んだときは自分が腐ってなかったから気づかなかったというか流してしまったというか。
そんな感じ。
ミステリにおける同性愛って敷居低いんですかね。
深春と京介のやりとりが見ていて若いなぁ、と。
7年たった今だからこそ、京介の思わせぶりな態度なんかも流せている深春ですが、出会った当時はそう簡単に流せはしなかったのですね。
ライトについて。
私のライトの知識はこのシリーズに書かれていることだけといっても過言じゃないでしょう。
正直、建築なんて微塵も興味ないですし。あれだけ長々書かれていても「へえそうなんだ」くらいな興味しかないです。
この話がミステリじゃなければまったく知らず、知ってもせいぜい「地震でも倒壊しなかった帝国ホテルの設計者」くらいな一般的な知識しかを得ることがせいぜいだったでしょう。
作中でも書かれている通り、ライトが好んだ劇的な物語的なストーリー。
彼を飾りつけたメッキがどれだけのものなのか非常に気になります。
京介が卒論のテーマに選んだ下田菊太郎もなかなか興味深い人物ではありますよね。
事件自体は悲しい話でした。
もう少しどうにかならなかったのかなと思う一方で、どうにかなっていたらはじめさんは輝額荘を安い値段で貸し出すこともなかったのではないのかとも思いました。
それだと深春と京介は出会えていなかったことになりますからね。致し方なかったのか。
次巻はとうとう蒼の話です。
ノベルス版あとがきを見る限り当初はタイトルが違ったのですね。
『硝子の柩』→『原罪の庭』に変更されたタイトルですがどちらも納得できます。
原罪の庭を読んでいてちょっと気持ち悪くなった記憶があるのでちょっと二の足を踏んでしまうのですが、いつか読んでしまいたいと思います。
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