世界螺旋 ―佐能探偵事務所の業務日記―/梨沙
おんぼろアパートの一室にある『佐能探偵事務所』。未来視の力を持ち、眼帯をつけた高校生の戒が社長で、社員は彼の兄である新(+猫一匹)のみ。ただし最近は、父親の浮気調査を依頼しにきたことのあるクラスメート・美姫が入り浸るようになり、事務所の中は今までよりも少しだけ賑やかになった。けれど肝心の客はめったに訪ねてこない。しかし、事件は意外なところから始まり…?
しばらく前に古本屋で購入していた作品です。 ようやく読めました。
表紙を見てあらすじを読んだ私は、「予知能力を持つ少年と押しかけ助手の女子高生がトラブルに巻き込まれながら事件?トラブル?を解決する話」なんだろうな、と思っていたんです。
が、全然違いました。
内容的には「破壊」の未来だけが見える少年・戒を救うため、ヒロイン・美姫がめちゃくちゃ頑張る話です。
戒の見る未来は破壊の瞬間だけで、その破壊は無数に存在するパラレルワールドにも影響するんだとか。
例えば、Aという世界でコップをたたきつけて割ってしまったとします。
すると世界Bではコップは不注意で割れ、世界Cではコップは一人でに割れていたりするわけです。
過程はどうあれ、結果は全てコップが割れてしまう――つまりは「破壊」に至っていると。
その未来を見ていることしか出来なかった戒でしたが、美姫が「破壊」を予言された貯金箱を守り抜いたことで未来を変える決意をすることになります。
絶チルの未来予知より性質が悪いことにこの世界では1の破壊を防ぐことで、当初の予知の何倍にも肥大して破壊が訪れるんです。
どんどん肥大していくそれをなかったことにするために、美姫が奮闘するわけです。
前半はめちゃくちゃ読みづらいんですが、物語が動き出してからは一気に読めました。
なので、この本を読むのなら前半で投げ出さないで最後まで読んでほしいです。
でも正直、胸糞悪いです。
人の悲惨な死にざまや事故の情景なんかが描かれるし、過去が変わることによりヒロインの頑張りはほとんどなかったことになってしまっているし。
それなのにも関わらず、カオス団の方のもう一つの予言は生きているというのがもうわけがわからない。
私自身、SFが苦手でタイムパラドックスとか考えているともう頭こんがらがってしまうんですが、矛盾がありそうな気がします。
そして、作中でさらっと流されている「シュレディンガーの猫」の話。
この本の想定読者って中高生ですよね?
今の中高生で「シュレディンガーの猫」をなんとなくでも理解している人はいるんでしょうか?
私自身も名前と「生きているけど同時に死んでいる」という話ぐらいしかわかってないです。
(ちなみに私は
このラノベでその理論を知りました)
作品としては続かないでしょうね。
戒は能力を失い、美姫はそういう事情でもなければ自身の能力を使うことはなさそうですし。
思っていたよりも面白かったですが、前半のグダグダっぷりが勿体ないし、精神的に結構キツイのでグロ耐性ない人はちょっと覚悟してからどうぞ。
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