めぐる架空亭/草川為
小説家・小山笹舟は祖父の部屋で同郷の憧れの文士・雪村千鳥の未完の遺作『架空亭』を発見! なんと読後に小説の中の架空亭が出現し、笹舟を招き入れる。ところ架空亭は客の生気を吸収して存続していることが分かり、病弱な笹舟には大問題。次の客を連れてくると約束するが…!?
結構久しぶりの草川さんの作品です。
前回の
ガートルードのレシピを紹介したのが、昨年10月ですからね。
表題作
【めぐる架空亭】と
【999番目のハナ】が収録されています。
【架空亭】はあらすじにもあるとおり、故人である雪村の遺作。
雪村の思い入れがあまりにも強い作品であったために、魂が宿り、たくさんの人に取り付き渡り歩いてきた。
偶然、笹舟にとりついたことから物語は始まります。
正直、はじめて読んだときこの作品あんまり好きじゃないな、って印象しかなかったんです。
(
【999番目】がツボだったこともあり余計そうでした)
数年ぶりに読み返してみたら、普通に面白くて。
やっぱり自分も年をとって、考え方や感じ方が変わっているんだなと実感しました。
ガートルードと同じく、人と人外が関わる話な訳ですが、単純にドタバタだけで終わりません。
わずか4話の話なんですけど、ちゃんとシリアスも含んで、ハッピーエンドになるあたりさすがです。
笹舟だけでは架空亭に通いつづけることは厳しいでしょうが、真向もいるしどうにかなるでしょう。
まあ、笹舟が亡くなったあとどうなるのかはちょっと気になりましたが。
気にしても仕方ないですね。
【999番目のハナ】はなんというか春めかしい話でした。
とある学校に転校してきたハナちゃん。その学校には樹齢1000年を誇る桜の木があって。
それに宿る精霊・千を元気にさせようとする話。
ハナちゃんが可愛いです。
先輩に恋するんだけど、ちゃんと引き際を見極めているあたりかっこいい。
千もちょっとお調子者だけどあのタイミングで復活するとかかっこいい。
こちらは恋が始まる?ってところで終わっているので、その後が気になってしまうんですが、ここで終わっている方がいいような気もします。
ちゃんとまとまっているので、下手なことしたら蛇足になりそう。
この作品、前述の通り、本当に数年ぶりに読んだんですが楽しめました。
こういう昔は微妙だったんだけど今読むと楽しめる本とかいっぱいありそうだなぁ。
少しずつでもそういう作品を発掘できるといいな、と思います。
[0回]
COMMENT