密室は眠れないパズル/氷川透
エレベーターの前で胸を刺された男は「常務に、いきなり刺された」と犯人を名指しして絶命した。
“殺人犯”は、エレベーターで無人の最上階へ向かうところを目撃される。電話は不通、扉も開かない。
ビル内には犯人を含めて九人だけ。犯人はなぜ逃げようとせず、とどまっているのか――。
やがて最上階のエレベーターは下降を始めた。そして扉が開く。
そこには、背中を刺され、血まみれで息絶えた常務が倒れていた。
――いったい誰が、いかなる方法で殺したのか。
常務が犯人ではなかったのか。
積み重ね、研ぎ澄ました論理の果てに行き着くのは八人の中の一人。
新鋭が読者に挑戦する正統派長編本格推理。
以前紹介したメフィスト賞受賞作
「真っ暗な夜明け」を書かれた氷川透さんの作品です。
前作同様図書館で借りてきました。
今回もまた作者と同名の人物が登場し、探偵役を務めます。
まあもっとも今回は作品途中までは探偵助手の位置に甘んじているかたちになっているのですが。
それでも最後に真相を明らかにするのは氷川透ですから、探偵役といって差し支えないでしょう。
あらすじにもあるとおり、今回もまた密室モノ。
プロローグや氷川の年齢を見ると、前作真っ暗な夜明けよりの前の出来事であることがわかります。
前作が手元にないため、断言できないのですが、この作品の最後で「氷川は警察の取調べというものを初体験した」とあるんです。
でも前作でも警察の取調べは初めてだから云々って描写なかったですっけ?
私の記憶違いかもしれませんが、ちょっと気になりました。
まあ、そのような些事どうでもいいのかもしれませんけど。
今回もまた登場人物たちそれぞれの視点で心情を描きつつ進んでいきます。
そして探偵役が仮設を打ち立てて、それを1つずつ打ち消していくという形式をとっています。
相変わらずちょっとくどい感じもしますが、「密室講義」だとか「ミステリ議論」だとかは楽しめました。
私の意見としては新本格だろうが本格だろうがおもしろければなんでもよし、かなと思うのです。
私は探偵によって謎が解かれていく様を読むのが好きなので、それが描かれていることがミステリの大前提だと。
まあ西澤保彦さんの、神麻嗣子シリーズのような一部例外もありますけどね。
トリックについて。
あれは結構はじめのうちに気付きました。
じゃなければ、コートに対してあそこまで言及されることはないだろう、と。
ミステリ慣れしている人はある程度わかったのではないでしょうか。
なので、いったいいつになったら氷川は主導権を得て犯人を言及することになるのかな、と。
そういうことも気にしつつ読み進めていました。
氷川透シリーズはあと何冊かあるみたいなんですが、地元の図書館にはあと1冊しかないんだよなぁ。
そのうち借りてきて読んでしまいたいと思います。
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