0能者ミナト/葉山透
科学が隆盛を極める現代。だが、その片隅にひっそりと息づく異形のものたちがいた。存在を知る一部の者たちは、それを「怪異」と呼んだ。
当然、怪異を相手にする生業もある。修験者、法力僧、呼ばれ方は様々だが、その中でひと際変わった青年がいた。九条湊――どこか斜に構えたクセのある青年だが、彼が同業者から疎まれているのはそこではない。霊力、法力、神通力、彼はそんな力を一切持っていない。それにもかかわらず、怪異を倒すという。その手腕は驚くべきものだった。
タイトル、あらすじにひかれて購入しました。
「0能者」ってタイトルが上手いですよね。
それだけで、「化物退治系ながら主人公は無能力者である」ってことが伝わりますから。
前々からメディアワークス文庫は気になっていたのですが、今回が初。
思っていたより対象年齢が高めなのですね。
ラノベ程度だと思っていたので、ちょっと驚きました。
第一話『嫉』
嫉の封印が解かれ、巫女の少女・沙耶を生贄にしようとするのを阻止する話。
1話ということもあり、メインキャラクターの紹介もかねています。
メインとなるのは主人公で「0能者」の湊。
御影神道の秘蔵っ子、神降ろしも出来る巫女・沙耶。
そして総本山の天才少年・ユウキ。
まさかの主人公登場シーンに、「こんなのありなんだ!?」と非常にびっくりしてました。
いくらなんでも主人公が大麻栽培して、その煙で具合悪くなっているとかマジでどうなの?
いやでもこれだけインパクトある登場シーンってそうないだろうから、ある意味成功なのかもしれませんね。
嫉の正体については納得。
だからこそ、祠も何もなく野ざらしで奉られていたんですね。
湊が武器として使用したものに関してはあまり詳しくないので、そういうのもあるんだ程度にしか思えませんでした。
ちょっと気になったこと。
化け物に空気って必要なんだろうか。
第二話『呪』
最高峰の呪術師一族が不可解な呪いをかけられる話。
ぶっちゃけ気持ち悪かったです。
毎夜、生きながらにして体が溶けていくとか想像しただけで気持ち悪くないですか。
なので、この作品そういうのが苦手な方にはおすすめ出来ません。
鬼頭家の力をもってして誰がどのようにかけたのかわからない呪いを湊が見事に解き明かします。
途中でもしかしたら……とは思っていたのでそこまで驚きませんでしたが、その執念というかかけた年月には驚きの念を隠せませんでした。
逆にそれだけの年月をかけたからこそ、最後の行動につながったのでしょうね。
呪いはすでに発動してしまったからあの人にはどうすることも出来なかったのでしょう。
知恵の輪のくだりが深いなぁとか思って読んでました。
これって才能のあるなし関係なく誰でもあてはまることじゃないですか。
思わず納得してしまいました。
そして、奥さんが怖い。けっこうまともに見えましたが、実は一番怖かった。
閑話『告』
喫茶店での一幕。
ミナトと沙耶とユウキの保護者というか後見人というか、そんな感じの3人が会話しているだけの短編です。
昔が垣間見ると同時に、次作への布石です。
でも巫女さんと托鉢僧が喫茶店で同じ席についているって結構シュールな感じですよね。
次回の怪異は「鏖(みなごろし)」のようです。
週末にでも、2巻を購入してこようと思います。
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