決壊石奇譚 百年の記憶/三木笙子
一人で生きていこうと決めていた。君と出会うまでは。
鉱石の記憶を読み解くことができる少年。
秘め続けてきたその力を初めて明かしたのは、生真面目で融通がきかない“紫水晶の君”だった。
同級生の大地に誘われて地学部に入部した、高校一年生の徹。
鉱石の話になると途端に饒舌になる彼と過ごすうちに、徹は大地が持つ不思議な「力」を知ることに。
特定の石に触れると、前の所有者の記憶を読むことができるのだ。
大地は、同じ力の持ち主である祖父・伝(つたえ)から記憶を受け継ぎ、昔、祖父が親友と交わした、当てのない約束を守り続けていた。br 話を聞いた徹は、大地を約束から開放したいと願い、ある決意をする――。
水晶、瑪瑙、琥珀、翡翠……、鉱物が照らし出す真実とは?
図書館で借りてきました。
読み切るのに、数日かかるとは思いませんでした……。
読み終わった感想としては「え、これで終わり?」というものでした。
なんていうのかな。ものすごく中途半端というか、含みを持たせすぎたというか。
もうちょっとどうにかならなかったんだろうか、というのが正直な感想です。
不思議な力を持った少年・大地と徹が出会うことで物語ははじまります。
他者を思いやるがゆえにすれ違ってしまった過去の人物たちの願いはかなうのか、という話。
きちんと明記はされていなかったと思うのですが、徹の様子なんかを見る限り、時代背景は昭和っぽかったです。
徹の父・航の学生時代で戦後数年とかそんな話があったので、単純に考えても昭和ですね。
あさのあつこさんや恩田陸さんとかを想像してもらえると分かりやすいかと思うんですが、この作品の登場人物たちの大半がニアホモっぽい。
大地と徹、伝と良治、賢一と航もそれっぽい。
登場人物の間にほとんど血縁が存在していないのも何か理由があるのかな?と深読みしたくなってしまいました。
というか、改めて思い返してみるとこの作品女性登場してましたか?
せいぜい徹のおばあさんがおじいさんや父親の話で登場してしたくらいの気がするんですが。
あ、そういえば先輩のおばあさんが最初の方でちらっと登場してたな。
徹たちの通う学校が男子校だからってこともあるんでしょうけど、ある意味すごいな。
石を媒介に、良治から航へ、航から徹へと受け継がれた記憶。
それは長い年月の間に変質してしまったんですね。
はじめは単純な「再会の約束」だったんですが、それがいつの日にか「再会したら復讐される」と意味合いが変わってしまって。
伝はただただ良治を待ち続けただけだったのに、と。
なんともモヤモヤする展開でした。
これ間に航を通さずに良治から徹へ記憶が思いが受け継がれていたらどうなっていたのだろう、と思いました。
そうであれば、ここまでややこしいことにはならなかったんじゃないのかな、と。
最後、意識不明となった徹を救おうと大地が手を差し伸べたところで終わっています。
「かすかに大地の手を握り返したように感じた。」でしめられていて、その後の展開は読者の想像にゆだねられる形になっています。
ハッピーエンドは徹が目覚めて良治と伝が長い年月を経てようやく再会するといったところでしょうか。
まあ、私が一番最初に想像したのは「徹が目覚める日を思い、大地が徹の世話をしながら待ち続ける」というものでした。
暗い……。
ストーリー自体は嫌いじゃなかったのですが、一体誰が主人公だったのだろう?というくらい焦点が定まらなかったのがちょっと残念でした。
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