怪物はささやく/パトリック・ネス(原案/シヴォーン・ダウド 訳/池田真紀子)
ある夜、怪物が少年とその母親の住む家に現れた――
それはイチイの木の姿をしていた。
「わたしが三つの物語を語り終えたら、今度はおまえが四つめの物語を私に話すのだ。おまえはかならず話す……そのためにこのわたしを読んだのだから」
嘘と真実を同時に信じた少年は、なぜ怪物に物語を話さなければならなかったのか……
図書館で借りてきました。
本が好き!さんで文庫版が献本にあがっていて気になっていた作品です。
献本では外れてしまったのですが、読めて良かった。
物語は悪夢に悩まされる13歳の少年コナー・オマリーが主人公。
コナーの両親は離婚しており、母と二人暮らし。母は重い病に苛まれており、それゆえに学校でも腫物に触るような扱いを受けていました。
そんなコナーのもとに怪物がやってくるところから物語が始まります。
イチイの木の怪物は3つの物語を語り4つめの物語をコナーに語るように、と言ってくるのです。
コナーは現実と夢のはざまをさまよいながら怪物の話を聞くことになります。
怪物が語るのは『魔女の王女と王子の話』『アポセカリー(薬剤師)と司祭の話』『だれからも見えない男の話』の3つ。 どの話もハッピーエンドではありません。バッドエンドというのも語弊を招きますがなんというか、結末はどれも後味がいいものではありません。
それでもコナーにとってなければならない物語だったのでしょう。
正直、コナーが悩まされる悪夢の正体は途中からなんとなく想像ができていました。
彼がそれほどまでに恐怖を抱く存在は何かと考えればそれ以外ないだろうな、と。
それゆえに、彼のもとに現れた怪物は本当に怪物だったのだろうか、と首をかしげてしまいました。
確かに異形の姿をした人外の存在という意味では怪物でしょう。
ですが、それが恐怖を抱く存在かといえばそれはまた別の話のような気がしてなりませんでした。
少なくともコナーにとって、怪物の存在は覚悟を決めるための布石とでもいいましょうか。一種の救いでもあったのでしょうから。
実はこの話、原案のシヴォーン・ダウドは亡くなっています。
彼女が残したキャラクター、物語の舞台、導入部。それにパトリック・ネスが肉付けして1冊の本として世に出されたのだとか。
これはこれで面白かったのですが、シヴォーン・ダウドが最後まで描いたらいったいどんな話になったのかも気になりました。
この本、随所にジム・ケイによるイラストが散りばめられています。 いや、モノクロのイラストは不気味さをあおって雰囲気は出ていたのですけど、正直ちょっと見づらいと思ったのは私だけでしょうか。
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