モロッコ水晶の謎/有栖川有栖
とある社長宅のパーティに招かれた推理作家・有栖川の目前で毒殺事件が発生! 邸内にいた10人の中でグラスに毒物を混入できたのは誰か、そして動機は……。犯罪学者・火村が超絶論理で謎に挑む表題策ほか「助教授の身代金」「ABCキラー」「推理合戦」を収録。本格推理の醍醐味に満ちた<国名シリーズ>第8弾。
かなり久しぶりの有栖川さんの作品です。
今日はエイプリルフールということもあり、ツイッターのbotが片桐さんになっていたりと茶目っ気ある試みに楽しませてもらっていました。
それを見ていたら最近読んでないなーと思い出して引っ張り出しました。
まずは、
『助教授の身代金』。
作者もあとがきで触れていますが、なんとも語弊を招くタイトルですよね。
てっきり火村先生が誘拐されてしまったのかと思ってすごくワクワクしながら読んでいました。
読みはじめてすぐに助教授≠火村助教授だとわかりましたけど。
まさかの展開といっていいんじゃないでしょうか。
そして、珍しくまともな発言しているな、と思った有栖の発言も伏線でしかなかったんですね(苦笑)
次、
『ABCキラー』。
これは
「ABC」殺人事件なるアンソロジーに収録されたもの。
あとがきで語られていましたが、はじめは「
ABCD殺人事件」だったんですって。
うん?って思う方いると思うんですが、赤川次郎さんの四文字熟語殺人事件シリーズと同名なんですよ。
だから『ABCキラー』に変更されたんだとか。
閑話休題。
アガサ・クリスティーの『
ABC殺人事件』の模倣というか、それが連想される事件がおこります。
絶叫城殺人事件と同じく、架空のものを現実世界に持ち出したように見えたから、ああも名前が出ているんでしょうね。
何のつながりも見えない4つの事件。
いかにして謎を解いていくのか見物です。
思わず、なるほどと思わされました。
逮捕されることのない3人目の罪、実はこれが一番罪深いんじゃないかなと思いました
3つ目は
『推理合戦』。
これは掌編――SSですね。
久しぶり(?)に朝井女史が登場しています。
彼女が連載を開始した週刊誌の小説の話から何故か、推理合戦というかお互いの行動をあて始めた火村先生と朝井さん。
それにちょっと納得がいかなかった有栖がわざわざ現地に確認までしにいくんです。
現地で確認したところ、2人の推理の過程がわかります。
そして、ちょっとした意趣返しにと、連載を開始したばかりの推理小説の犯人をあてます。
たまにはこういう話もいいですね。
最後は表題作の
『モロッコ水晶の謎』。
有栖が取材にいった先でホームパーティーに参加することになるのですが、そこで1人が毒殺されてしまいます。
事前に毒を混入したならば、いかにして被害者が毒入りグラスを選ばせたのかがわからなくて。
被害者がグラスをとってから毒を入れたんだとしたら隙が見当たらなく。
火村先生は苦戦を強いられます。
動機というか、犯行を実行した犯人の心境がまったく理解できませんでした。
なぜ、たったそれだけの理由であんな賭けめいたことが出来るのでしょうか……。
若干、不安定っぽいな、と読んでいて思ったのは確かですが、あそこまでひどいことになっているとは思いませんでした。
なんというか、すごく怖いなと思いました。
ただそれだけです。
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