ウェルカム・ホーム/鷺沢萠
「フツーの家族」って、なに?
ふつうとは少しカタチが違うけど、とっても温かいふたつの家族の情景を描いた心ぬくぬくの物語。
「結婚」なんかしてなくたって、血なんかつながってなくたって、家に帰ってきたときに、こう言ってくれる人が、たぶんあなたのほんとの家族。
「おかえりなさい!」
図書館で借りてきました。
初めて読む作家さんだったのですが、思ったより好みで。
ほかの作品も読んでみたいと思ったのですが、すでに亡くなられているよう。
それでも図書館に何冊かはあったので今度また借りてきたいと思います。
『渡辺毅のウェルカム・ホーム』と『児島律子のウェルカム・ホーム』の2編が収録されています。
作品間のつながりはとくにありません。
どちらも一般的には普通とはいえない家族の話。
けれど、最終的には幸せな家庭の話です。
まずは、『渡辺毅のウェルカム・ホーム』から。
小学生の作文からはじまります。
「ぼくの家族」というありがちな題材なんですが、そこに書かれている内容を読んで思わず「え、これってホモ?」と思ってしまいました。
まさに作中でツヨシが気にしていたことですね。
いや、だってね?
「お父さんがふたりいて、お母さんはいない。タケパパは家事をしている」って内容なんですよ。
そりゃ勘違いしちゃいますよ。
父子家庭に居候しているタケシの視点で話は進んでいきます。
タケシの過去や今の思いなんかが語られて。
一般的には「フツー」じゃないことも普通に受け止めらて。
すごくいいな、と思いました。
汚れてしまったから書き直された完成した作文にすごくあたたかい気分になりました。
ちなみに、ノリが作文に漢字を使わないのは文字数を稼ぐためなのかと思いました。
やりませんでした? 漢字を少なくしたり改行を多くしたりとかそういうこと。
次は『児島律子のウェルカム・ホーム』。
バリバリのキャリアウーマンである律子の話。
なんというかこの人、男運悪すぎる気がする。
自分で子どもを産むことは出来なかったし、愛し育てていた娘にも反抗されて……。
これもまた回想シーンが長いんですが、バブルを知らない世代としてはそうなのかーと。
ランチに2万とかないわ。しかもそれが普通とかびっくりしました。
最後の方のすし屋さんでの会話に思わず涙してしまいそうになりました。
この話を読むと血の繋がりなど本当に些細なことなんだな、と思わされました。
2編とも途中まではいったいどうなるんだろうと思っていたのですが、読後感がすごくよかったです。
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