ハイライトブルーと少女/靖子靖史
二十代も終盤にさしかかりつつある会社員ウミノの一日は、通勤途中にある昔ながらのタバコ屋で幕を開ける。ハイライトを一箱買い、店の前で一服。その窓口にあらわれる店番の少女、如月さなえとのやりとりをささやかな楽しみにしていた。
ある日、ウミノはタバコ屋の矍鑠たる老店主、如月志乃が亡くなったことを知る。しばらくの間休業していた店が再会すると、そこには他界した祖母がのりうつったかのような威勢のいい口調と仕草で話す、見慣れた少女がいた。ウミノが“シノちゃん”と名付けたその少女は、彼にある頼みごとを持ちかけてくる。
図書館で借りてきました。
最近、地元図書館に講談社BOXとか、ボカロの小説とかそういうのが入荷されることが多くなってきてちょっと驚いてます。
あらすじにもあるとおり、昔ながらのタバコ屋に通う青年・ウミノが主人公。
シノちゃんに頼まれごとをされ、さなえちゃんのため動く様子が描かれています。
上には書いてないんですが、書評家の方々のコメントに「青春」の文字があるんです。
ですが、ウミノは作中で27歳の誕生日を迎えています。二十代終盤で青春ってどうなの?と思いながら読んでいたんです。
が、これはありですね。
確かにこれは青春モノといっていいでしょう。
長編といいつつもページ数は213ページ。実際手に取るとよくわかるのですがけして厚くはありません。
さらりと読めてしまうので、むしろ「え、もう終わり?」となってしまいました。
1時間かからず読み終えたってのは自分でもちょっと驚きました。
でも、これ以上は蛇足になるでしょうから、このままでいいんでしょうね。
ヒロインの年齢が14歳なので、正直な話、ウミノはロリコンなのでしょう。
初恋云々いってるし、後輩の女の子・みっちゃん(24歳)を振ってまでさなちゃんをとったりしてますし。
でも、それにエロさとかやらしさとかはないんですよね。
ただただ、ウミノがさなちゃんとシノちゃんのためだけに動く様が淡々と描かれています。
はじめ、すっかり騙されてしまいました。
志乃さんが亡くなって、さなちゃんの思いによって引き止められてしまった存在。それがシノちゃんと説明されていたので、素直にそうなのか、と信じていたんです。
けど、実際はシノちゃん=志乃さんではなかったんですね。
きっとウミノははじめからわかっていたんでしょうね。
だから、シノ“ちゃん”だったのでしょう。
船の上での一幕にはちょっと泣きそうになってしまいました。
さなちゃんにとって、志乃さんの、シノちゃんの存在は非常に大きなものだったんですよね。
最後、タバコ屋はなくなり、さなちゃんは引っ越すことになります。
そのときに、ウミノに「タバコがすえるようになるまで待ってて」と告げているわけですが、ウミノは待つんでしょうか?
みっちゃんからのアタックはまだあるみたいですから、そっちと付き合う可能性も否定は出来ませんが、なんとなくウミノなら待つんだろうな、と思いました。
中々おもしろい作品だったので、デビュー作の方も読んでみたいな。
今度図書館で探して見ます。
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