井上ひさしジュニア文学館 ブンとフン/井上ひさし
フン先生が書いた小説の主人公ブン。
なにひとつ不可能のない四次元の大泥棒ブンが小説から飛び出して大暴れ!
世界中で摩訶不思議な事件がおきて大騒ぎ……。
アンパンのヘソが蛙の腹に…、あらゆる権威や常識に挑戦、痛烈な風刺と笑いがいっぱいの奇想天外の物語。
図書館で借りてきました。
本が好き!の企画用だったので普段自分じゃ読まないような本ですね。
ソ連が存在し、東京ドームはまだなくて、月面着陸の話が登場しこの作品がはじめて発表されたのが1970年とのことなのでそれぐらいの時代背景のようです。
売れない作家であるフン先生の書いた小説『ブン』。
大ヒットとなった『ブン』から主人公である大泥棒ブンが飛び出してしまったからさあ大変。
不可能のない大泥棒は様々なものを盗みまくるようになり、世界は大混乱に陥ってしまう――。
っていう感じのお話です。
本1冊からブンが一人飛び出すので、その数なんと12万!
禁書目録あるいは超電磁砲の
妹達は2万人+α(内1万人は本編初出時ですでに死亡)ですから彼女らもびっくりな数です。
ブンたちの盗むものは本当に馬鹿らしいもの(アンパンのへそを盗んでカエルにつけてみたり)から、まさに不可能のないブンだから出来ること(テムズ川の水を一滴残らず盗んで見せたり)だったりするのですが、話が進むにつれそんな盗みの様相が変わってきます。
偉い人の虚栄心だったり記憶であったりと目に見えないものへとシフトしていくのです。
それゆえに訪れる大混乱にはもうびっくり。
この本にはいくつか、きりとり線やのりしろがあるのですが思わず笑ってしまいました。
でも、時代の流れでそのシーンよりも他の部分の方が問題だよな、と思いながら読み終えました。
男尊女卑だったり、LGBTへの差別だったりそういうのですね。
まあ、当時はそれが普通だったのでしょうけどね。
『一億総活躍』って言葉が声高に叫ばれていたのがまだ耳に残っていたためオチでもある『一億総泥棒』というワードはすごく皮肉っぽく思ってしまいました。
明らかにこちらの方が先に発表されてますから意図したものではないと思うのですが。
バカバカしいぐらいぶっ飛んだ言葉遊びの楽しい作品でした。
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