君の膵臓をたべたい/住野よる
偶然、僕が拾った1冊の文庫本。
それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった――
読後、きっとこのタイトルに涙する
図書館で借りてきました。
前々から読みたいと思っていたので読めて良かった。
物語は、主人公である少年と少年のクラスメイトである少女・山内桜良の交流を描いた青春小説。
なんともショッキングなタイトルでカニバリズム的な想像をされて読むことを避けている方がいるのなら安心してください。
そういうカニバリズム的描写はありません(笑)
主人公の少年の名前は終盤まで登場しません。
桜良やクラスメイトの会話に少年の名前は登場しているようなのですが、
「だから、結局【秘密を知ってるクラスメイト】くんにしか頼めないのよ」(p7)
「死ぬまで元気でいられるようにってお願いしたよ。【仲良し】くんは?」(p87)
「【目立たないクラスメイト】こそ、どうしてこんなところに?」(p159)
「【?????】くんの名前もよくあってるよ」(p187)
のように、一環して名前は描かれません。
1冊通して読み終わった今なら、これは一人でいようとする少年から見て、言葉の主が少年をどう思っているかを表しているものなのだろうな、と。
上のセリフは3番目をのぞき、すべて桜良のものです。
だからこそ、その変化が顕著です。
はじめはただの【秘密を知ってるクラスメイト】でしかなかったものの【仲良し】になり、少年には理解の出来ないもの【?????】に変わったと。
最終的に普通に少年の名前・志賀春樹が登場するのですが、それは少年が成長し、人とかかわるようになり記号としての他人から見た自分だけに意味を見出すという行為をしなくなったからなのかな、なんて想像してしまいました。
物語序盤で、桜良がすでに亡くなっている描写がされていること、病気により余命が幾ばくも無かったことが語られていたことなどからして桜良の死は避けられないことではありました。
けれど、ああいう変化球めいた死を迎えることになるとは……。
まあ、確かにあのニュースはどこか唐突な感が否めませんでしたからどこかでもしかして?と思う気持ちがあったことも否定しません。
でも、せめてきちんとした最期を迎えてほしかったなという思いも強いです。
死を描いた物語ではあるのですが、さわやかでどこかすっきりとしたお話でした。
久しぶりに青春小説らしい青春小説読んだ気がします。
面白かったです。
作者さんの他の話も読んでみたいと思います。
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