家守綺譚/梨木香歩
たとえばたとえば、サルスベリの木に惚れられたり、床の間の掛軸から亡友の訪問を受けたり、飼い犬は河童と懇意になったり。白木蓮がタツノオトシゴを孕んだり。庭のはずれにマリア様がお出ましになったり。散りぎわの桜が暇乞いに来たり。と、いった次第の本書は、四季おりおりの天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。
庭・池・電燈付二階屋・汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多――。
それはついこのあいだ、ほんの百年すこしまえの物語。
図書館で借りてきました。
私の中で梨木さんといえば、これ!なんですが、なぜか持ってないんですよねぇ。
全然関係ないんですけど、帯の「ほんの百年すこしまえの物語」ってフレーズで、
明日のナージャを思い出しました。
ググったらナージャの方は「むか~し昔、100年位昔。これは、運命の扉の向こう側を旅した、女の子の物語。」だったよう。
懐かしい(笑)
この本は、掌編が書きつられられた連作短編集になっています。
普段私は、掌編じゃなくSSの呼称を使うんですが、この作品に限っては掌編を使いたいです。
【サルスベリ】【都わすれ】【ヒツジグサ】【ダァリヤ】【ドクダミ】
【カラスウリ】【竹の花】【白木蓮】【木槿(むくげ)】【フリガネニンジン】
【南蛮ギセル】【紅葉】【葛】【萩】【ススキ】
【ホトトギス】【野菊】【ネズ】【サザンカ】【リュウノヒゲ】
【檸檬】【南天】【ふきのとう】【セツブンソウ】【貝母(ばいも)】
【山椒】【桜】【葡萄】
の28編からなっています。
亡友の生家に棲む青年・綿貫が遭遇した静かだけれど不思議な出来事を順に語っていきます。
時間軸としては1年ほどの出来事になりますね。
1話1話非常に短いので、少しずつ読み進めたい方とか、お気に入りの話を何度も読み返したい人とかは読みやすいかもしれません。
ただ、文体がわざと古く書かれているので多少読みづらさはあります。
学校の教科書でやった明治の文豪とかの作品をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。
古典ほど読むのには困らないけど、若干の読みにくさってあるじゃないですか。あんな感じ。
しかも、ルビがほとんどないので余計大変でした。
「基督」ってなんて読むかわかりますか?
答えは「キリスト」なんですが、思い出すまでちょっとかかってしまいました。
読んでいて、なんとなく
×××HOLiCを思い出しました。
妖たちの成すことが当たり前で、主人公の常識を打ち砕いていく感じ。
主人公が漢字こそ違いますが、どちらも「ワタヌキ」なので余計そう思うのかもしれません。
あ、でもこちらの綿貫は、死んだはずの高堂が頻繁にやってくることを簡単に受け入れていましたから不思議なことに対する耐性みたいなものはこちらの方が高いのでしょうね。
最近まで知らなかったのですが、この作品って続編出てるんですね。
冬虫夏草って確か図書館にあったと思うので今度借りてきたいと思います。
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