小野寺の弟・小野寺の姉/西田征史
さえないけれど、ほっこり幸せに暮らすたった二人の物語。
東京の片すみ、木造一軒家に二人で暮らす小野寺進と小野寺より子の姉弟。
結構な歳だけど結婚できずにいる二人は、特別仲がよいわけでも、悪いわけでもないけれど、なんだか支えあって暮らしている。
ある日、そんな小野寺家の郵便受けに間違って配達された一通の手紙。
二人はその手紙を届けに行くことにするのだが――。
引っ込み思案な弟と、こだわりが強く生命力の強い姉の、さえないけれど、ささやかな幸せが香る日常を描いた物語。
図書館で借りてきました。
この方の本、はじめてなんですけどいわゆる業界人の方なんですね。
作者経歴を見ると、脚本家で演出家。最近のものだとタイバニのシリーズ構成・脚本をやられてたらしいです。
まあ、私タイバニ見てないんで(見たらはまりそうで怖い)「へーそうなんだ」くらいにしか思えないんですが。
内容的にはかなり軽かったです。さらりと読めてしまいました。
40代の姉と30代の弟、交互の視点で物語は進んでいきます。
作中の内容から察するに、6、7歳は離れている兄弟なんだと思います。
起承転結でいう転がない作品なので、本当に「ささやかな日常」って感じ。
あらすじに「間違って配達された手紙を届けることに」とあるんですが、本当にそれだけなんですよ。
届けてそれから何かに発展することがないんです。
間違って手紙が届いた。そうだ、届けてあげよう。お礼に桃を貰った。食べた。終わり。
なんですよ?
まあ一応姉の方が、 そこの住人・岡野さんが弟の元カノと似てた。これをきっかけに2人が付き合うようになればいいのに。
と思うわけですが、弟にそんな気が微塵もないので空回って終わってしまうので。
ノリとしては連作短編に近いですが、タイトルは章になっているので短編集では一応ないようです。
所々に挿絵というか、ワンポイント?といえばいいのかな。
作中で登場したものの絵があるんです。
その中に自転車の鍵があったんですが、すごく懐かしかったです。
一昔前の自転車の鍵っていったらわかります?今の後輪についてる鍵じゃなくて、前輪についてる妙な形をした鍵のやつ。
いつの間にか、後輪の鍵が主流になっていたので今じゃ中々見かけませんね。
閑話休題。
姉弟の両親はどうしたのだろう、ということが気になりました。
なんとなく、姉がまだ学生時代に死んでいるんだろうなと。歳の離れた姉が弟を育て上げたって印象を受けました。
だからこそ、普通の姉弟よりは距離感が近いのかな、と。
弟が姉を一人にすることを躊躇して、自分の縁談を流してしまっているのとかを見るとそういう背景があるのかな、と。
作中で明言されていた弟のせいで失ってしまった歯云々はその一端というか「目に見えてわかることだから」取り上げられたのかなーと思いました。
この姉弟は、これから先もずっと2人で生きていくんだろうな。
姉と弟、どちらがかけても生きていけないような気がするので、どちらかが欠けたらもう片方もひっそりと亡くなっていそうな印象を受けました。
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