幻の怪魚釣り騒動記/中村淳
謎の怪魚を狙え!
それは退屈な高校生活に投じられた小さな出来事であったが、怪魚がくれた興奮は何よりも少年たちの心をめざめさせた。
図書館で借りてきました。
タイトルからしてなんとなく少年の心がくすぐられます(笑)
内容としては、とある男子高校生2人が怪魚釣りをしに湖に向かい、そこで怪魚や大人たちと触れ合ううちに大人になるという話。
タイトルの印象からして学生4人くらいでもっとワイワイガヤガヤしながら物語が進むかと思ったんですが、思っていたより違いました。
あらすじ込みでも170ページもない薄い本なのでさらりと読めるだろうと思っていたんですが、妙に物語に入り込めず無駄に時間がかかってしまいました。
巻末の著者略歴に「自らの体験を小説という表現方法で、少年たちや少年の心を失わない男たちにむけ発信し続けている」とあるんですが、まさにその通りだなぁ、というのが読み終わった正直な感想です。
青春小説めいた話ではありますが、これは男性向けの作品です。
エロいシーンがあるとかそういう意味ではないですよ?
ただ単純に少年たちやマスターの思考回路が、どうも女である私には理解しきれないというか。
ラストの描写を見るだけでもわかるかな。
少年たちは自分たちが怪魚を釣り上げたことを自分たちの中だけで隠し「支えてくれる密かなもの」にし、
マスターも少年たちが怪魚を釣り上げることを予見しておきながら何も言わない。
けれど(心配したってのも確かにあるんでしょうが)、女であるナツミだけが釣果を聞いているんですね。
それがすごく暗示っぽいなぁ、と。
以前読んだ
老人と海ほどではありませんが、感情移入しきれなかったというのが正直なところです。
「おまえの男を支えてくれる何かを密かに見つけることだろ」
「人の目にさらされれば、寄ってたかって一瞬にして濁されて輝きを失う」(p126)
マスターが敬介にいった言葉ですが、これは深いなぁ、と。
そしてそれを表現できるのは小説ならではなんでしょうね。
この方の作品はもうちょっと読んでみたいなと思いました。
女である私にとってどこまで共感して読めるかは疑問ですが、文体的には読みやすいので時たま読むくらいなら大丈夫かな、と思います。
今度図書館で見かけたら手に取るくらいはしたいと思います。
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