猫探偵 正太郎の冒険1 猫は密 室でジャンプする/柴田よしき
名前・正太郎(雄猫)、毛色・八割黒に二割白(長めの毛足)、飼い主・桜川ひとみ(ミステリー作家)、住まい・琵琶湖近郊、友“犬”・サスケ(チャウチャウ系の雑種)、特技・推理 ――。
飼い主を“同居人”と呼び、明快な推理で事件を解決してしまう正太郎。謎解きには、こだわりや、仕掛け、いたずらが満載。
猫好き、ミステリー好き絶対満足。猫探偵の六つの事件簿!
かなり久しぶりの柴田よしきさんの作品です。
いつぶりだろう?
このブログをはじめた初期のころに2冊読んで以来かな。私柴田さんの作品、この正太郎シリーズしか持っていないのですが、最近新作が出てないですよね。
エピソード的にはまだ語られていないものがあったと思うので、そのうち発売してくれないかなー。
この短編集は今までのシリーズ同様、正太郎視点で事件の真相を暴いていく話と、人間側からみた飼い主・桜川ひとみ先生とその愛猫・正太郎の話が交互に収録されています。
『愛するSへの鎮魂歌(レクイエム)』
桜川先生のストーカーの話。
まずは人間側からみた話です。とあるアンソロジーに収録された同居人こと桜川先生の短編を自分に向けられたメッセージであると勘違いした男が、犯罪をおかしつつ近づいていく話。
今までの作品とかなり毛色の違う作品です。
サスペンス?といえばいいのかな。とにかくミステリではないです。
最後のオチは結構好きでした。
『正太郎とグルメな午後の事件』
京都のジャンクフードを食べ歩きつつ対談するという企画の最中におこった事件の話。
おやじさんこと同居人の同業者であり、正太郎の育ての親でもある浅間寺先生も登場します。
正太郎やサスケの言葉を理解するおやじさんはとっても好きです。
正太郎が「情報が少ない分、推理の幅は広がるんだ」と言っているんですが、それは推理とは言わないんじゃないのかなーとか思ってみたり。
確信を持てるまで秘するタイプの探偵がなんかそんなこと言ってた気がします。誰だったか忘れてしまいましたけど。
猫たちの会話の概念が説明されていてちょっと面白かったです。
ポメラニアンって確かにキャンキャンうるさいイメージがありますね。可愛いですけど。
ポメラニアンくんが助かってよかったです。
『光る爪』
不倫相手の飼う猫を見に行った女性の話。
次は人間視点の話です。
『光る爪』は比喩ではなく、ラメ入りマニキュアを塗られたために『光る』。
猫の爪がポロリと取れてしまうってのは知りませんでした。
猫を飼ったことがないので、「へぇ~」と感心してました。
猫に対する屈折した憧憬が少し怖いな、と感じました。
『正太郎と花柄死紋の冒険』
マンションの花壇で死んでいた猫の話。
猫が遺した『ダイイングメッセージ』。
一瞬「は?」となったのですが、この作品の世界観ならおかしいことではないんですよね。
シリーズ1作目でも2作目でも猫たちは文字を用いて人間たちにさまざまなことを知らせようとしていました。
ならば、飼い猫が飼い主に何かを伝えようとダイイングメッセージを残してもおかしくないかも?とまで考えてしまいました。
実際は違ったんですけどね。
同居人はうすうす正太郎の能力について感づき始めているよう。
おやじさんのように全てを理解することは出来なくても、大事なときに通じ合えればいいんじゃないかな。
全てを理解している少女が、なんかいいな、と思いました。
彼女が大きくなったときとても素敵な女性になるんじゃないかな。
『ジングルベル』
クリスマスイブを一人で過ごしたくない女の話。
読んでいて悲しくなってくるというか、クリスマスってそこまでしなきゃいけないものなのかな?と疑問。
まあ、そこらへんは個人の考えというか、物語ですからね。
最後、女性の涙にすごく悲しくなりました。
『正太郎と田舎の事件』
密室殺人モノを書かなければならない同居人が、おやじさんと密室モノ書きの推理作家の実家に遊びに行く話。
タイトルである『猫は密室でジャンプする』はこの作品で行われています。
タイトル通り、密室殺人です。
おやじさんは登場するのですが、この作品にサスケは登場しません。
それがちょっと残念。
かわりに別の猫が登場するんですが、この田舎というのが、猫にとっての楽園とでもいうべきところなんですよ。
そこで起きた事件はけっこうドロドロしています。
最後、デレた正太郎(なんか違うかな)が可愛くて好きです。
こういうシメ方は読後感が一気に良くなるからいいよなぁ、と。
おもしろかったですが、やっぱり私は正太郎視点の話の方が好きでした。
このシリーズあと3冊くらいあるんだったかな?
今度は今回ほど間をあける前に読んでしまいたいと思います。
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