雪の夜は小さなホテルで謎解きを/ケイト・ミルフォード(訳/山田久美子)
12歳のマイロの両親が営む小さなホテル<緑色のガラスの家(グリーングラス・ハウス)>に、ある冬の日、5人の起毛な客が現れる。彼らは全員が滞在予定日数を告げず、他 の客がいることに驚いていた。なぜ雪に閉ざされたホテルに来たのか? マイロは客の誰かが落としたと主四季古い海図を手がかりに、彼らの目的を探ることにする。それはホテルの秘 密につながっていた……? 心あたたまる聖夜のミステリ。
本が好き!さんを通じて出版社からいただきました。
時期的にもう少し前に読みたかったかなーと思いますが、まあ仕方ないですね。
宿<緑色のガラスの家>を営む、マイロの両親。
そこの常連客たちはいわゆる密輸人たち。
彼らは自身の取り扱うものに合わせて移動するため、ある程度宿を利用する時期が決まっているのです。
そんな宿に時季外れの、しかも初見のお客さんがなんと5人もやってくるのです。
客たちにはどうもそれぞれ秘密があるらしく、ひょんなことからマイロ少年はTRPG《オッド・トレイルズ》になぞらえて作り上げたキャラクター・《ブラックジャック》のネグレとして 秘密を解き明かしていくことになります。
そんなマイロの、ネグレの相棒というべき存在である少女・メディ。
彼女もまた《注解学者》のサイリンとして、謎に挑むことになるのですが、彼女にも大きな秘密があったんです。
メディの秘密は、途中で「もしかして?」と思っていたので、当たっていて良かった。
序盤の物語が動き出すまで――客たちが宿にやってきて、それぞれ落ち着くまでは少し単調というか。
ご恵贈いただいたのに読み切るのが大変かも?と思っていたのですが、泥棒が現れて盗まれたものたちを探し出そうとしはじめたあたりでしょうか。
時計はともかく、なぜメモ帳や小さな古いバッグが亡くなったのかさっぱりわかりませんから、その隠し場所を見つけ、盗まれたものに隠された秘密が明かされるうちにどんどん物語が面白くなってきたのです。
後半のスリリングな展開は、一気読みしてしまいました。
実はマイロと両親は血がつながっていません。
作中の説明によるとマイロがアジア系(というか中国系)の少年であり、それは一目でわかることなんだとか。
それでも、彼らきちんと家族です。
父・ベンも母・ノーラも客の相手で忙しくても息子の存在を忘れていることはなく、きちんと様子を見て声をかけて、クリスマスにはプレゼントを用意してと非常にあたたかな家族であ ることが見て取れます。
まあ、ノーラが作中で何度も「問題ない?」と聞いていたのは、ちょっと意味合いが違う気もするんですけどね。
どうやらこの作品、続編が発表されているようです。
とはいえそれは、2017年とのことですから、日本語で読めるようになるのはもっと先の話でしょうね。
ただ、そのタイトルがものすごく本書のネタバレくさくてちょっと笑ってしまいました。
それでもその本で再び、マイロとメディが出会えていればいいな、と思いました。
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