シロクマが家にやってきた!/マリア・ファラー(絵/ダニエル・リエリー 訳/杉本詠美)
障害のある弟ばかりが優先され、アーサーは、毎日がまんばかり……。
ある日、大好きなサッカーのテレビちゅうけいが見られなくなり、とうとう家をとびだします。
アーサーの目の前にあらわれたのは……シロクマ!
本が好き!の企画で紹介するために図書館で借りてきました。
うーん、自分からこういう本を借りることはないので本当に新鮮ですね。
主人公は大きな音や落ち着いて行動することが苦手な弟・リアムを持つお兄ちゃん・アーサー。
すぐに我慢を強いられるアーサーはある日、我慢しきれずに家を飛び出してしまうのです。
が、家出は長続きしません。なぜならそんなことよりも衝撃的な出来事が起こるから。
そうあらすじにもある通り、家の前にシロクマがいたから!
そりゃあ、びっくりしますし、怒っていたこともふっとんでしまいますよね(笑)
シロクマのミスターPをこっそり家にあげて両親をひどく驚かせてみたり、いじわるな女の子をやりこめたり、担任のクラドック先生の慌てふためく様にクスクス笑ったりととコメディ要素の強い作品だと思って読み進めていたのです。
ですが、その根底にあるものはそんな軽いものではないのです。
どうしても家族の中心にいるのは障がいのある弟・リアムであり、アーサーはいつも我慢を強いられ嫌な思いをしています。
それを訴えても両親は嗜めたり、その場では耳を傾けてもそれだけです。
「(略)ふたり(両親)が、ぼくがいることに気づくのは、ぼくが悪いことをしたときだけだ。ねえ、ミスターP……これって、不公平だと思わない?」(p82)
この言葉に思わず泣きそうになってしまいました。
どこまでもアーサーはお兄ちゃんであろうとしているのです。
そして、弟を家族を嫌いになれないのです。
それでも、こんなこと言わせちゃダメでしょう。
そんなアーサーの心に寄り添い、文字通り包み込んでくれるミスターPはアーサーの心の支えだったのでしょうね。
ミスターPと触れ合ううちに、少しずつ心持ちが変わっていくアーサー。
そして、大きな音や突発的なことに対応できなかったリアムもまた少しずつ対応できるようになっていくのです。
個人的には、兄弟は成長してますけど両親の対応がちょっとなぁ、と。
まあ、リアムが変わったのでそこまで我慢をしなくてもよくはなると思うのですがまだちょっと心配です。
成長した二人を見届けてミスターPは去って行ってしまいます。
アーサーのお母さんが言うように、ミスターPを必要としている人の元へ向かったのでしょう。
またミスターPの物語を見てみたいものです。
[25回]
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