ほたる館物語 3/あさのあつこ
冬休み――一子と柳井くんは、おばあちゃんから「バイト」を頼まれ、繁忙期のほたる館を手伝っていた。そんな暮れのある日、山菜などを商う「山ばあさん」が久しぶりに訪ねてくる。彼女が金木犀を嫌う理由を聞いた一子たちは、おばあちゃんの悲しい「初恋」についても知ることとなった……。
今もっとも注目を集める作家の好評デビュー作シリーズ、待望の第三弾!
<解説・森絵都>
この作品、「新ほたる館物語」は別として3巻までは学生時代に読んでいると思うんですけどまったく覚えていませんでした。
今回は冬休みの話です。
一子とゆうれいくんこと柳井くんがほたる館の手伝いをします。
この「ほたる館」の一子と「バッテリー」の巧はやっぱり根幹が似ているな、と思いました。
それというのも、一子が子ども扱いされることを嫌がるんですよね。
「子どもなのにえらいなあ」とか「小学生なのに立派やわあ」とか言われるとカチンとする、と書かれてるんです。
一子からしたら、お金を貰う以上小学生だろうがバイトだろうがきちんと仕事をするのは当たり前のこと、なんですよ。
すごく立派だと思います。
私もお金貰って働いてますが、そういう風に考えたことはなかったなぁ。
そこまで真剣に仕事に励んでない自分が恥ずかしくなりました。
「山ばあさん」というおばあさんが登場します。
山菜だとかを採って売っているんです。
何故か、おばあちゃんが山ばあさんに対する態度が少しだけ違うんです。
その理由は山ばあさんの息子がおばあちゃんの初恋の相手だったから。
息子さんは、戦争にいってそのまま戦死してしまったよう。
山ばあさんにとって金木犀は息子を「手柄をたてて死んで来い」と言って見送ったことと直結しているのでしょう。
山ばあさんやおばあちゃんの話を聞いて、戦争について知りたいと思った一子たち。
湯里は図書館がない地域らしく、役場に行くんですが軽くあしらわれてしまいます。
あれは読んでいるだけでもすごく悔しい。
忙しいのかもしれない。確かに戦争について夏場に特集を組むっていうのもわかる。
でも子どもだからと言ってまともに相手にすらしてやらないのは、ひどい。
柳井くんの言葉で気づいたのですが、図書館ってたいてい市立とか区立とかそういうもの。
つまりその市なり区なりに関係ない(住んでるとか職場があるとか)と借りることって出来ないんですよね。
そういう目にあったことってないので、すっかり頭から抜け落ちていました。
一子と柳井くんの関係はあまり発展してませんが、お互いがお互いに影響を与えていくこの関係が好きです。
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