ねこのばば/畠中恵
お江戸長崎屋の離れでは、若だんな一太郎が昼ごはん。寝込んでばかりのぼっちゃんが、えっ、今日はお代わり食べるって? すべてが絶好調の長崎屋に来たのは福の神か、それとも……(「茶巾たまご」)、世の中には取り返せないものがある(「ねこのばば」)、コワモテ佐助の真実の心(「産土(うぶすな)」)ほか全五篇。若だんなと妖怪たちの不思議な人情推理帖。シリーズ第三弾の、始まり始まり!
『茶巾たまご』
長崎屋におとずれた幸福と、松之助さんのもとに持ち込まれた縁談の話。
意外と好きな話です。
見合いの顛末は予想できました。が、松之助さんを間違えたりするところはおもしろかったです。
貧乏神信仰ってあるんですね。
創竜伝の5巻でしたっけ?番外編で下2人が「貧乏神様」なんていってましたが、あながち間違いじゃなかったんですねー。
『花かんざし』
迷子になっていた於りんという幼女の家におとずれた悲劇の話。
於りんちゃん可愛かったです。お雛さんのインパクトはかなり大きいし、さらっと読む分にはおもしろかったです。
が、テーマはかなり重たい話。
現代なら精神鑑定だとかそういうことにもちこまれるような事件。
犯人が死んでしまったことにより有耶無耶に終らせてます。
作中で若だんなも答えられませんでしたが、難しいですね。
『ねこのばば』
捕らえられた猫又を救うはずが、寺でおきた奇妙な事件を解決するはめになる話。
寛朝さんのキャラがいい。
こういうキャラは憎めません(笑)
こちらも「花かんざし」と一緒で、テーマは深い。
幼いころから寺で育てば世間知らずにもなるのかも、と思ったものの、犯人の語ったことは怖いです。
『産土(うぶすな)』
若だんなを救おうと右往左往する佐助の話。
佐助の過去話です。
この本、再読なんですがはじめて読んだとき勘違いしてしまいまして。
若だんな=一太郎が死んだの!?と一瞬思ってしまったんですよね。
結末を知っている今落ち着いて読むと、結構冒頭から違うってわかるような描写があるんですが、はじめて読んだときは気づけなくてびっくりしたものです。
ちょっとホラーっぽかったです。
『たまやたまや』
三春屋のお春ちゃんに縁談が持ち込まれる話。
お春ちゃんが出した不思議な頼みごとをしたため、一太郎が縁談相手のもとに向かう話。
あげたはずのない煙管はそういうことだったのか、とちょっと物悲しい気分になりました。
だからこういうタイトルなんだな、と納得したものの「たまや」といえば花火くらいしか思いつかない人間としては作中で登場しなければわからなかったと思います。
綺麗であろう花嫁行列を見る若だんなはきっと寂しいんだろうなぁ。
今回収録されてる作品、物語の根本にあるテーマが重たくて現代でも起りうるようなものでした。
すごく考えさせられましたが、正しいことなんてなかなかわからないんでしょうね。
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