おしかくさま/谷川直子
おしかくさまはお金の神様です
バツイチ子供なしの49歳・ミナミ。
先行き不安な彼女が見つけた希望とは!?
第49回文藝賞受賞作
現代日本の"お金"信仰を問う痛快小説
鳥居の向こうにATMというなんとも不思議な世界観のイラストに興味を惹かれて借りてきました。
ちなみにイラストはテッポー・デジャインさん。
物語はミナミとその妹・アサミ。
二人の両親、そしてアサミの娘・ユウの視点で語られます。
浮気を疑われた父がなぜか『おしかくさま』の使者として説法してることを知ったことから、お金の神様であるおしかくさまに触れていくことになるのです。
160ページちょっととけして長い話ではありません。むしろ短いぐらい。
だからこそ、視点がコロコロ変わってもそこまで混乱に陥ることもなく読み進めることができました。
作中に登場するお金の神様・おしかくさま。
日本では八百万の神が宿るといわれているわけですから、お金に神様がいてもおかしくないのかも?と読み進めていて思いました。
ATMがお社で、ATMにあずけいれて引き出すことでお清めとなる、というのはなるほどなぁ、と。
お札が1万円なのはぼったくりとみるか他の寺社仏閣と比べてもそこまで高額ではない気もするので、信じているならいいのかも?と思ってみたり。
それでも、おしかくさまの言葉を聞くために行うという『おしかくさん』には笑ってしまいました。
おしかくさんといいますが、実態はコックリさんです。
普通、コックリさんだと鳥居のある場所にATMがあるのがおしかくさんのそれなんだとか。
ATMとかどうやって描くのかと思ったら、きちんと公式サイトからダウンロード出来るようになっているあたりすごく現代っぽい(笑)
この作品の作中時間軸って震災から少したってからの話なんですよね。
それゆえに、品切れしていたろうそくが普通に買い求めることができるようになっていたり、義援金の話だとかが登場するんです。
タブー視されがちなお金の話、しかも寄付の話にまで言及してるのはなんというかすごいな、と。
作中では結局明言されることのなかったおしかくさまが本当に存在するのか否か。
少女は本当に啓示をうけたのでしょうか。
それらが明かされることはないでしょう。
けどそれはそれでいいかな、と。
短いお話でしたけど考えさせられました。
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