はるなつふゆと七福神/賽助
会社をクビになって自堕落な生活を送る都冬のもとに、小さな老人2人があらわれた! その正体はなんと七福神! しかし、七福神は七福神でも福禄寿と寿老人というかなりマイナーな神様だった…。知名度が低いことを悩む二柱に、ネットを使ったPRを頼まれた都冬。「――お二人の名を広める事が出来たら、私の願い事も叶えて貰えますか?」そうして、都冬と神様たちの可笑しな生活がはじまった…!
この本は、実はまだ発売前の本だったりします。
ブクログからいただいた見本品とのことなので、製品版とは多少違うところもあるようです。
それでもかまわない方に感想を読んでいただければと思います。
あらすじにもある通り、元OLの榛名都冬(はるなつふゆ)のもとに神様がやってくるところから物語は始まります。
自分自身の願いを叶えて貰うことを引換に七福神の中でもマイナーな二柱の知名度を広げようとする、ってところがスタートです。
なんですが、神の力というのは信仰されていてナンボです。
神様の御用人や
夏目友人帳の露神でも、マイナーどころなら
ぬら孫の千羽様でもいいですが、信仰心の薄れた神には大した力がないってのは題材としてよく語られますよね。
この作品でもそれは同じです。
七福神というメジャーな団体でありながら、福禄寿と寿老人はかなりのマイナー。
時代によっては同一視されたり、外されたりしていたこともあるんだとか。
そのため、他の神の力を借りて先に都冬の願いを叶えて貰おうとしたりもするもののその神たちにもお願いをされてしまい中々当初の目的はかなえられないんです。
貯金を食いつぶしながら、神様たちの願いをかなえようと、隙を見て自身の願いを叶えて貰おうとする話。
この作品って、本のサナギ賞優秀賞受賞作。
本のサナギ賞自体は、現役書店員さんたちを審査員として、この本売りたい!ってのを期待を込めてめちゃくちゃ押すよっていう賞。
読んで思ったのは、確かにこれはサナギだな、と。
デビュー作であるということを差し引いても展開もキャラクターも詰め込みすぎな感じが否めませんでした。
敢えて残したであろう伏線を除き、きちんと伏線も回収されていて本としては問題ないんですけど、ごちゃごちゃしすぎかな、と。
いきなりバトルになったのは本当に驚きました。
都冬が恋心を抱いている仁谷くんが全く魅力的に感じなかったのが非常に残念。
「内角の和」の話に関してははいい話だなと思うし、それを聞いて都冬が彼に恋してしまうのはわからなくはないんです。
でも、それを何年も引きずってかつ神さまたちのせいとはいえ、かなり酷い目にあわされてそれでも、っていうのは本気でわからなかったです。
というか、仁谷くんサイドの話が一切わからないこともあり、彼はなぜあんなことをしていたのか……。
全体的に惜しいなと思わされる本でした。
デビュー作でこれなら……とも思うのですが、妖怪やら神様やらって今ブームなので、この手の話って本当に多いんですよね。
どこかで読んだような話という印象がぬぐえなかったです。
自分自身でこの本を買うことはないでしょうし(基本買うなら文庫派なので)、この機会に読めて良かったです。
見本品なんて珍しいですし、それがいただけただけでも本好きとしては嬉しかったです。
[2回]
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