みずうみの歌/ほしおさなえ
大切なものがどうか見つかりますように。
水没した町に秘められた少年の過去
「すべてはあの町から始まったのよね」
母が最期に残した言葉の真意を知るため、独りきりになった少年は母の故郷を訪れる。
手がかりは古いモノクロフィルムと未完の小説。
町は徐々に陥没がすすんでいて、一部が大きな湖に飲み込まれていた。
湖底に残された“思い出の品”を回収する男性・モグリに出会った少年は、しなやかに泳ぐ姿から"サカナ"と名付けられ、彼の仕事を手伝うことに。
そのモグリもまた、過去にある秘密を抱えていた。
サカナは、聞けなかった母の想いと顔を知らない父の秘密に近づいていく。
図書館で借りてきました。
タイトルと表紙のイラストに惹かれて手にとったんですが、あらすじだけだと表紙の少女が謎ですね。
物語は母を亡くした少年が遺品の中から一冊の雑誌を見つけることから始まります。
その中に『ピルグリム』という写真と小説の合作という一風変わった作品があるんですが、その間にモノクロフィルムを見つけるんです。
フィルムを現像に出した少年はそこに母の姿を見つけ、撮影場所を探しに、母の過去を知るために母の故郷へと向かいます。
母の故郷であるその町は地盤沈下の影響か土地が陥没し、どこからか水が流れ込み半ば湖に沈んでいました。
そこで湖から物を引き上げる「モグリ」と出会い、「サカナ」と名付けられ仕事を手伝うようになるというのが前段階ですね。
母の過去を追い、写真に写る少年の存在を追ううちにサカナは
歌手になることを夢見る少女・芽衣や、
芽衣の友人・朋子とその兄・亮平と知り合いどんどん核心に近づいていきます。
ジャンルとしては何になるのでしょうか。
幻想的ではあるけれど、ファンタジーというわけではない。
青春ものといったほうが近い気がしますが、それもまた違う気がするんですよ。うーん難しい。
作中、ラスト間近になるまでサカナもモグリも本名が語られません。
それゆえに簡単なはずの物語がごちゃごちゃしているように見えてしまいます。
けれど、初対面のころにお互いの名を名乗っていたらモグリはさっさと町を去り謎は謎のまま、サカナの胸のうちにしこりを残していたんでしょうね。
そういう意味では最後までごちゃごちゃしてたのは逆に良かったんでしょうね。
作中作である『ピルグリム』。
いわゆるSFファンタジーになるのかな?
作中では設定とあらすじ程度しか語られないんですが、結構面白そうだったんでちょっと読んでみたかったです。
でも、読み進めていくうちになんかいいやってなってしまいました。
実はこの『ピルグリム』、作中でも最終回は謎のままなんです。
いろいろあって雑誌で連載されていた最終話前話までと続編の内容しかわからないんです。
最終回は作者のみ知る、って状況だったんですが作者があまりにも酷かったので冷めてしまったというか。
そんな感じ。
ラストで、自分の進むべき道を見失っていた少年・サカナが望として生きて自分の道を探し始めるというところで終わっています。
芽衣や朋子の進む道もとても平坦とはいえない道ですが一歩一歩進んでいくんだろうな、と思わされる作品でした。
おもしろかったです。
ちょっと物語に入り込むまで時間がかかってしまったんですが、一度入り込んだらするする読める感じ。
初めて読む作家さんだったんですが、あたりでした(笑)
今度図書館にいったらこの作者さんの別の作品を探してみたいと思います。
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