ハートブレイク・レストラン/松尾由美
フリーライターの寺坂真以が仕事場代わりにしているファミリーレストランには、名探偵がいた。店の常連ハルお婆ちゃんは、客たちが話す「不思議な話」を聞くと、真以を呼び寄せ、たちどころに謎を解いて見せるのだ。そんなお婆ちゃんにも、ある秘密があったのだが……。
可愛くって心優しいお婆ちゃん探偵が活躍する、ハートウォーミングな連作ミステリー!
そんなに分厚い作品ではない(本編は282ページまで)のは確かなんですが、かなり読みやすかったです。
連作短編自体読みやすいってのはありますけど、それでも1時間半強ってのは私の中でも相当早いので。
『ケーキと指輪の問題』…ケーキの中から出てくるはずのない指輪が出てくる謎。
『走る目覚まし時計の問題』…鳴らないはずの壊れた目覚まし時計が鳴った謎。
『不作法なストラップ』…きっちりとした女性の1点だけおかしい服装の謎。
『靴紐と十五キロの問題』…目の前で転倒した男性が残した言葉「十五キロは嘘だろう」の謎。
『ベレー帽と花瓶の問題』…ありえないはずの場所で目撃された傷害事件の犯人の謎。
『ロボットと俳句の問題』…ロボットに細工をしかけた謎とハルさんが真以に近づいた謎。
の6編が収録されています。
駆け出しのフリーライター真以が利用するファミレスはどこか暗くて、お客が少ない。
不思議な事件に出くわして困っていたときに、声を掛けてきたのはちびまる子ちゃんのおばあちゃんみたいな髪型でいつも和服を着た可愛らしいおばあちゃん。
そのおばあちゃんが安楽椅子探偵として「日常の謎」系から傷害事件までさまざまな謎を解いていきます。
真以はそのおばあちゃん――ハルさんと謎に悩む人たちとの架け橋となるわけです。
なぜ間に真以を挟まなければいけないかというと、ハルさんは幽霊だから。
もう20年も前に亡くなっていて、元々このファミレスのある土地はハルさんのお宅があったところなんだとか。
ハルさんを見ることが出来る人間と出来ない人間がいて、真以は見ることが出来るけれど、謎に悩む多くの人たちはハルさんを見ることが出来ないから。
まったく怖くない幽霊ハルさんとライター真以の交流、真以の恋の行方なんかが進行していきます。
おもしろかったです。
『走る目覚まし時計の問題』、『ロボットと俳句の問題』に登場する三田村社長が好きです。
茶目っ気たっぷりな社長ってなんだかいいですよね。
なんとなくちょっとぽっちゃりした老年の男性ってイメージがあったんですが、実はスリムだったよう。
『ロボット~』の隠し部屋云々で細身じゃないと入れないとあって「そうだったのか」と。
でもまあ、社長に感じる印象が変わる訳ではなし、とくに問題はないんですけどね。
なぜ、ハルさんは真以に声をかけたのか、という当初の疑問も明らかにされ、南野さんとの恋も始まり、終わり方としてはスッキリしていてよかったのではないでしょうか。
ただなぜタイトルが『ハートブレイク・レストラン』だったのかが疑問ですが、特に気にしなくてもいいかな。
これ続編が出ても面白い気がするのですが、続編はかかれていないようです。
軽いタッチのミステリーを読みたい人にオススメです。
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