人魚の石/田辺青蛙(せいあ)
人魚の男と私。
おんぼろ寺での奇妙な共同生活は、私を壊す……。
ある日私は誰もいないおんぼろ寺に帰ってきた。
掃除に取り掛かった私が池で見つけたのは、真っ白な事象人魚の男『うお太郎』。
人魚にも見えないが、人間とも思えない不思議な生物だった。
うお太郎は「この寺の周辺には奇妙な石が埋っており、それを私には見つける力がある」と言うが……。
本が好き!さんの献本で頂戴しました。
多分、献本としてははじめてのハードカバー本です。
【幽霊の石】
【記憶の石】
【生魚の石】
【天狗の石】
【目玉の石】
【祖母の石】
【未来の石】
【夢の終わり】
【人魚の石】
が収録された連作短編。
話数分けされてますが、実際は章立てされてると思って問題なしです。
主人公は「あんた」「坊ちゃん」なんて呼ばれる青年・日奧由木尾(ひおくゆきお)。
彼が幼いころに暮らしていた寺に戻ったところから物語はスタートします。
寺の庭にあった池の底から人魚を名乗る男が現れ、奇妙な共同生活がはじまるのです。
人魚に天狗に、様々な力を持つ石。
どこか幻想的で、
xxxHOLiCや
家守綺譚を思いだしました。
石を探す力を持ちながらも、それを拒否する由木尾。
しかしながら、天狗は力ずくで石を探させるし、不幸を運ぶという人魚とともにあることで中々にハードな自体が巻き起こっていくわけですが、それでも人外の存在であるがゆえに彼らの強硬さは気にせず読み進めることが出来ました。
けれど、後半になって明らかになる祖父の秘密。
それはどこまでが本当でどこからが記憶に翻弄されたものだったのか。
中々に好みの物語だっただけに、後半に明かされていく人の業とでもいいましょうか。
そういったものにびっくりしてしまいました。
そしてラスト。
……めちゃくちゃ不穏なんですけど、これいったいどうなってしまうのでしょう。
続編が出たらぜひ読みたいです。
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