別府フロマラソン/澤西祐典
尖った別府の「フロマラソン」には"裏"が存在する!?
別府市在住作家による書き下ろし痛快小説。
もちろん小説の舞台は別府。別府八湯を圧倒的なスケールで描き、市内の温泉施設や名所が多数登場。
読み終わると、温泉には入らずにはいられなくなり、別府に行きたくなる!注釈を読むだけで別府温泉のことがぜ~んぶわかるよ!
本が好き!さんを通じて出版社さんからいただきました。
ちなみに出版社さんは書肆侃侃房さんーーしょしかんかんぼうと読みます。
物語は帯にもある通り、別府温泉を舞台にしたお話。
痛快というかはちゃめちゃというか、もう訳がわかりません。
たぶん、これが頂きものではなく図書館で借りていたとしたらたぶん途中でページを閉じていたと思います。
主人公の青年・明礬湯太郎とサークル「温泉研究会」の先輩・十三(じゅうざ)先輩とともに「別府フロマラソン」という過酷なイベントに挑む姿が描かれています。
実際に、別府温泉をいくつもめぐる『べっぷフロマラソン』なるイベントもあるのですが、それとは別物。この作品はあくまでフィクションですので。
「別府フロマラソン」のルールは下記の通りです。
別府の代表的な温泉郷である別府八湯からそれぞれランダムに選ばれた8カ所、プラス扇山のどこかに現れる特設露天風呂、普段は入れない隠し湯の計10カ所に入ること。
期限は日の出頃から火まつり(野焼き)が終わるころ。
10湯すべてにつかりおえたものにのみ、ゴールが提示される。
そして、一番にゴールにたどり着いたものの願いが何でも叶えられるというものなのです。
バスや自転車等、文明の利器の使用が禁止されているのでまさに勝負は知力体力時の運といった感じ。
もうこの設定を読んだだけではちゃめちゃ具合が伝わるのではないでしょうか。
このはちゃめちゃ具合を楽しめる人にはこの本はおもしろいだろうし、楽しめなくて白けてしまう人ではこの本は楽しめないと思います。
ちなみに私は後者。
本編は130ページとかなり薄く、脚注一覧、後書きをいれても160ページほどしかありません。
それなのに読み終わるのに4時間以上かかったのは単純に私がこの作品の世界に全くといっていいほど浸れなかったからだと思います。
主人公である湯太郎にも十三先輩にも、ヒロインである愛夢ルナにもまったく感情移入できなかったのもつらい。
またこの作品、脚注がめちゃくちゃ多いんですよ。 そのNPO法人八湯温泉道名人会と別府大学学生有志の協力のもと作成された脚注はある意味力作。
けれど物語の世界に入り込むには現実の世界に引き戻す脚注が邪魔です。
でも脚注は非常に細かな情報まで網羅されているので、読まないのは勿体ないんですよね。
難しいところです。
本としての出来はともかく、別府温泉に行ってみたくなりました。
自分では絶対手に取ることがなかったでしょうから、いい経験になりました。
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