左近の桜/長野まゆみ
交わりを求めてくるのは、あやかしの者ばかり。
その気はないけど、ちょっといい感じ?!
武蔵野にたたずむ風変りな宿その長男・桜蔵の奇妙な日常を描く匂いたつほどかぐわしい連作小説
武蔵野にたたずむ一軒家。
じつは、男同士が忍び逢う宿屋である。
この宿「左近」の長男で十六歳の桜蔵にはその気もないが、あやかしの者たちが現れては、交わりを求めてくる。
そのたびに逃れようとする桜蔵だが……。
著者のデビュー二十年を記念する新シリーズ第一作。
図書館本。
こういう小説が図書館にあるとびっくりしてしまいますが、今思うと地元図書館ってBLが置いてあって知らずに読んでびっくりしたことあったなぁ。
【第1章 花も嵐も春のうち】【第2章 天神さまの云うとおり】
【第3章 六月一日晴】【第4章 骨箱(こつばこ)】
【第5章 瓜喰めば】【第6章 雲母蟲(きらむし)】
【第7章 秋草の譜】【第8章 空舟(うつおぶね)】
【第9章 一夜半(ひとよわ)】【第10章 件の男】
【第11章 うかれ猫】【第12章 海市】
が収録されています。
この作品はなんていったらいいのかな。
直接的な描写こそそこまでではありませんが、男性同士のあれやこれやが描かれています。
だけど、BLとしてしまうのは躊躇われるようなそんな耽美なお話。
主人公の青年・桜蔵は、いい関係になっている少女の存在があるのにも関わらず、それ以上に多くの男を惹きつけてしまう魔性の存在。
心も体も男性体であるのにも関わらず、”女”になるよう育てられた桜蔵が夢幻のような人ならざるものとかかわっていくんですね。
帯にあやかしとあったので、もうちょっと人外っぽい存在が登場するのかと思ったのですが、この作品に登場するあやかしはどちらかというと幽霊やそこから転じたものたちなのであやかしとされるのはちょっと違和感がありました。
過去の記録を見返してみると私が長野さんの本を以前に読んだのは2006年のこと。
少年アリス と
新世界を読んでいました。
その時は硝子細工のような硬質な儚さ美しさがあった気がしたのです。
ですが、この作品ではまさに桜のようなどこか柔らかくけれど儚く美しい。そんな気がしました。
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