本を守ろうとする猫の話/夏川草介
お金の話はやめて、今日読んだ本の話をしよう。
高校生の夏木林太郎は、祖父を突然亡くした。祖父が営んでいた古書店『夏木書店』をたたみ、叔母に引き取られることになった林太郎の前に、人間の言葉を話すトラネコが現れる。
君自身が旅を続けなさい。
メロスが最後まで走り続けたように。
お前はただの物知りになりたいのか?
シリーズ300万部超!
感涙の大ベストセラー『神様のカルテ』著者が贈る、21世紀版『銀河鉄道の夜』
図書館で借りてきました。
先日、
銀河鉄道の夜を読んだのはこの本の帯の言葉のためだったりします。
【序章 事の始まり】
【第一章 第一の迷宮「閉じ込める者」】
【第二章 第二の迷宮「切りきざむ者」】
【第三章 第三の迷宮「売りさばく者」】
【第四章 最後の迷宮】
【終章 事の終わり】
が収録されています。
連作短編めいたお話で、多分途中から読んでも問題ないけど、出来れば順番に読んでほしいお話。
トラネコのトラに導かれて、本を救う旅に向かうことになるのですがこれが読んでいてとても痛い。
けして難しい本ではありません。
二時間半ほどで読み切れたので、読みやすい本でもあります。
でも読んでいて痛いし、辛い。
一番最初の
「閉じ込める者」では、多くの本を読むこと=えらいと思い、読み終わった本は二度と読むことなくガラスケースの中に閉じ込められています。
私自身もこのブログを開設してしばらくして、毎日更新することに縛られていました。
毎日本を読むことが義務になってしまっていたのですね。
今は不定期更新になって、自由に自分の読みたい本を読めていますが、読んでいて過去の自分を思いだし傷痕をひっかかれているようなそんな辛さがありました。
次の
「切りきざむ者」は、現代人の忙しなさからいかにして短い時間で本を読むか→あらすじや要約を作ることに心血を注ぐ男が現れます。
私自身は本は1枚1枚めくっていって読みたいので速読すら否定派です。
だから、これは特に辛いとかはなかったのですが、『10分でわかる』みたいなのが多く見受けられる今は確かにそういうのもあるのだろうな、と。
3つめは
「売りさばく者」ってことで「売れる本を作る、売れない本はそもそも作らない」という出版社の社長が登場します。
なんとなくわかるな、と。
出版業界とは一切関係ありませんが、ラノベなんかだいたいそんな感じじゃないですか。ヒット作が出る→よく似た設定の本が出る。
ひと昔前は俺TUEEE系がもてはやされ、巻き込まれ主人公へ移行し、妖怪やら神様やらが台頭し、今は異世界トリップからの転生モノですか?
出版するのも利益が出ないといけないのはわかりますから、売れる本を作ること自体は悪いことじゃないだけになんともいえませんね。
「最後の迷宮」は読者や出版側ではなく、本自身によって試練が突き付けられます。
二千年近い時を超えて受け継がれる本、世界で一番読まれている本、ってことであの女性の正体は聖書なのかな?と思うのですが、明言はされていません。
本は読む人がいなければただの紙切れです。
それでも、人がいる限り形やはやりすたりはありつつも本がなくなることはないと思います。
本好きの人にはもちろん、本をあまり読まない人にも読んでもらいたい1冊でした。
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