踊る猫/折口真喜子
心にそっとあかりを灯す珠玉の連作短編。第3回小説宝石新人賞作家、待望のデビュー作!
俳人・与謝蕪村が垣間見た妖しの世界
夢か、うつつか、物の怪か
昔むかし、人々の見えるものが、今より少しだけ多かった時代。
不思議なできごとは、いつもすぐそばにあった――。
図書館で借りてきました。
一見、可愛らしい表紙なんですが、よく見るとちょっと不気味ですね。
所々に付く喪神らしきものもいてなんだか不思議です。
【かたわろ】
【月兎】
【踊る猫】
【鉦叩き】
【雪】
【夜の鶴】
【鳶と烏】
【雨宿り】
【梨の花】
【梅と鶯】
が収録されています。
最後の
【梅と鶯】は第三回小説宝石新人賞受賞作とのことです。
妖怪と人間の交流譚を描いた時代小説です。
蕪村が人々から話を聞く、という形で進む連作短編です。
あ、
【雨宿り】は自身が不思議な目にあってますけど。
この手の連作短編によくある1話で登場したものが最終話で問題を解決するのに使われるとかそういうのはなかったです。
まあ、ミステリーじゃないんでおかしいことではないんですけどね。
すごく女性らしい作品だな、と読んでいて思いました。
私、作者の性別って別に気にして読むことないんですが、この作品の雰囲気はすごく女性らしいというか。
女性じゃないとこの作品は描けないな、と。
妖が登場するといえど、しゃばけのように積極的に交流しているわけじゃありません。
ですが、それでもなんだか優しくて綺麗な物語でした。
なんていうのかな、帯の言葉の通りなんですよ。
人々は妖の存在を信じていたから、体験しているときは「一体何なんだ」と困惑したり恐怖したりするわけです。
でも、喉元すぎればなんとやら「あれは○○だったんだな」と思える時代にすごくいいな、と思いました。
新人賞受賞作である
【梅と鶯】は不覚にもちょっと泣きそうになってしまいました。
すごく優しくて切ない物語でした。
宗七が本当にいい人で、報われない。
ふっきれてはいますから、いつの日かいい人と結ばれて幸せになってほしいものです。
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