非常識家族/曽野綾子
本音で楽に生きましょう
人を見たらまず疑え、贅肉にも金にも毒がある……
世間にはびこるあらゆる偽善、虚飾を丸裸にする「曽野流創作落語」、いざ開演!
図書館で借りてきました。
タイトルに惹かれて借りてきたのですが、私にしては珍しく、ミステリーでも青春物語でもなく、事件も何も起こらない話でした。
一応小説ではあるんですが、小説というよりエッセイといわれたほうが納得するかもしれません。
まあ私、エッセイってまともに読んだことないんですけど、こういうエッセイなら読んでみたいな、と思わされる話でした。
物語的には主人公の大学生の青年・大介くんの周りを取り巻く大人たちの話。
両親、祖父母、叔父、叔父の友人、叔母だとかそういう人たちが世間の常識だとかにたいしていろいろ語るって形が「○○について」というタイトルで23回続きます。
1話1話は短いのですぐ読めます。
2006年1月から2007年12月に雑誌に連載されていたものの加筆修正されたものとのころなんで、こういう形なんですね。
時事問題が結構多かったですね。今読むと「そういやそういうことあったなぁ」程度なんですが、こういうのは雑誌掲載時に読みたかったな、と思ってしまいました。
殺人事件がおきるわけでもなく、大介くんが悩むわけでもなく、というか成長が見えるわけでもなくって感じなですが、それでもおもしろかったです。
この家族の考え方は確かに変わっていますが、思わず納得させられてしまうんですよね。
帯に載っているものなので、紹介しますが、
「国連は難民や飢餓の問題も扱っているのに、世界中にデブが増えていることに対して何で黙っているの」(肥満について)とか、
「生きるとは疑うこと。疑わない高齢者が詐欺に遭う。人間六、七十年も生きれば、この世にうま過ぎる話はないとわかるはず」(真・善・美について)とか、
「人口増加には退屈な教養番組が最高。『さあ寝るか』と思わせる番組は大歓迎だ」(人口維持について)とか、
「お棺に入る時は眠りに就くらしい恰好がいい。だから、パジャマを着せてゆっくりさせてくれ」(就寝時の服装について)とか、
そんなことがなんてことない会話の中で語られています。
正直、今の時代ならつまらない教養番組しかやってなかったら、DVD借りてくるなり、ゲームするなりやることがありそうな気がしますけど。
電休日でも充電さえしておけば携帯ゲームも1晩くらい持つよなぁ、とか思ってしまいましたが。
小説としては、山場も何もあったわけでなく、終わり方もすごく中途半端な気がしました。
加筆修正する前(雑誌掲載時)ならまだわからなくもなかったんですが、加筆修正してこれってどうなんだろうとちょっと首を傾げてしまいました。
でも、この話を読んで今まで興味すらなかったエッセイにちょっと興味が出てきたのでそういう意味ではよかったです。
小説とエッセイって区分が違うから、図書館なんかではコーナーが違うんですよね。
で、私小説のコーナーには入り浸ってるくせに隣にあるエッセイのコーナーにまともに足を踏み入れたことってなかったんです。
図書館に通い始めてもう10年近くたちますが、なんかエッセイってだけで敬遠してしまって。
今度行ったときにもう少しまともに見てきたいな、と思いました。
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