風の陰陽師 1 きつね童子/三田村信行
きつねの母から生まれ、京の都で父親に育てられた童子・晴明は肉親と別れ、智徳法師のもと、陰陽師の修行を始める。晴明の秘めたる力は底知らず……。尊敬する師匠や友人たち、手強いライバルとの出会いを経て、童子から一人前の陰陽師へと成長してゆく少年の物語。賀茂保憲、蘆屋道満など、周囲の人物も含め、新たな解釈で描く斬新な安倍晴明ストーリー。第50回日本児童文学者協会賞受賞のシリーズ第一巻。
<解説・榎本秋>
図書館で借りてきました。
ピュアフル文庫シリーズだったのできっと軽い話だろうな、と思って借りてきたのですが、思っていたよりかなり骨太というかしっかりしたものでした。
大陰陽師として有名な安倍晴明。
この話では、晴明が有名になる前、それどころか晴明が晴明と名乗る前から始まります。
それというのも時代が時代ですから、幼名っていうんですか?
元服するまでは、ただ「童子」と呼ばれていたからなんですけどね。
なんとも泣き虫でへたれというか臆病だった少年が、母・葛の葉のもとですごし、陰陽師としての修行を受けたことによってしっかりしていくのはすごいなぁ、と。
正直、安倍晴明=かっこいい、というイメージが先行しているのであまりにも臆病である様には最初びっくりしてしまいました。
都を出る前と帰ってきたあとではあまりにも違いすぎて、晴明の後見人である忠行なんかはびっくりしただろうなぁ。
安倍晴明の母がきつねであるとされているのは比較的、有名だと思うのです。
この話でもそういう設定で、一時的に葛の葉が住まう土地・信太の森ですごし、狐たちに助けられるのですが、子ぎつねたち――真比古と矢比古が可愛い。
いたずら好きとかいかにも“きつね”らしい性格の子どもたちなんですが、こういう子たちは好きです。
晴明の友人で、大盗賊を目指すという多城丸とその妹・小枝もまた可愛いなぁ、と。
誰かに従うことが嫌だからとその道を目指すってのもすごいですよね。
この子たちの挑戦はまだ始まったばかり。
彼らが先人であり煮え湯をのまされた相手・袴垂保輔をいつの日か超えてくれるんだろうな。
そういや、晴明の淡い恋心もありましたね。
出入りの陰陽師となり咲耶子姫と頻繁に会えるようになるようですが、この時代における身分差というのはけっこうきついもの。
陰陽師の地位が高くない時代ですからねー。出世街道からは外れてはいるようですが、中納言って結構地位としては高めだと思うんですよね。
咲耶子は中納言の娘であるわけですから、そう簡単にはいかないと思うのですがどうなるのか……。
ちょっと楽しみ。
そして、晴明の兄弟子でありライバルとなる蘆屋道満。
鷺麻呂がすごい気になります。けっこう好きです。
この鷺麻呂って式神とは別なんでしょうか?
正直、そこまで詳しいわけではないのでよくわかりませんけど。
晴明が光だとしたら、道満は闇。
これから先もきっと何かしら敵対していくんだろうなぁ。
いにしえより葛の一族に仕えているという赤眉。
彼の存在もいまいちよくわかりませんね。
なんとも都合のいい存在な訳ですが、彼の正体はいったいなんなのでしょう?
物語はまだ始まったばかり。
ちょっと調べてみたら4巻まではとりあえず出ているようですね。
図書館には確か2巻は置いてあったので今度借りてきて続きを読みたいと思います。
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