美貌の帳 建築探偵桜井京介の事件簿/篠田真由美
伝説の名女優・神名備芙蓉が二十八年ぶりに復活。伊豆の会員制高級ホテル(オテル・エルミタージュ)で三島由紀夫の『卒塔婆小町』を演じ、老婆から美女へ見事に返信してみせる。
だがその後、演出家の失踪、ホテルオーナー天沼龍麿の館の放火、芙蓉への脅迫と怪事件が相次ぎ、さらなる惨劇が!?
京介の推理が四十年に亘る愛憎を解く!
かなり久しぶりの建築探偵シリーズです。
前巻、
原罪の庭を紹介したのが、昨年夏ですから本当に間があいてしまいましたね。
解説を読む限り、この頃にはすでに
魔女の死んだ家が発表されていたんですね。
今調べてみたら、改編された
ノベルス版が発売されているようですね。
いつか文庫が出るのをゆっくり待ちたいと思います。
建築探偵シリーズは、ミステリーの中では比較的珍しい方だと思うのですが、作中で時間が進み登場人物たちが年をとっていきます。
だから、京介と深春は長い間在籍していたW大を後にし(まあ、生活自体はそう変わっていないようですが)、蒼も高校に通い始めたよう。
この物語は、ミステリーですから京介たちが遭遇し、否応なく巻き込まれた事件を解決するという面と、彼らが成長していく過程を描いたものでもあるんですよね。
今巻は、蒼が非常に悩んでいます。
高校に通いだし、他の生徒たちとの違いに馴染めなくて、不登校一歩手前って感じ。
自分の意思で通い始めた高校だから、と頑張っていますが、そのままだったら近い将来潰れていたでしょう。
弱音を吐くってことすらダメだと思っていたっぽいですし。
深春がいてよかったなぁと思いました。
京介は不器用すぎるし、なまじ昔を知っているからどこまで手を出していいかわからなくなってしまうんですね。
この作品を読むのは多分、3回目?
ノベルス版を図書館で借りて1度、文庫購入時に1度は読んでいるはずなので。
事件の方の犯人はまったく覚えていませんでした。
しかしながら、もうひとつの謎であった舞台の老婆から美女への入れ替わりはなんとなく覚えていました。
読んでいる最中にきっとそうなんだろうなぁ、と思いながら読んでいました。
事件の方もまったく覚えていなかったとはいえ、ちゃんとヒントには違和感を持てたのでまあいいかな、と。
基本的に、私はミステリーを読むとき犯人当てをしようとは思わない人間なので。
この作品って、腐女子として読むと、すごいなぁと思わされてしまいます。
遠山さんの冗談めいた悪ふざけの数々、蒼の京介への依存などなど。
どうしてこうも男性同士の描写が多いのかなぁ……。
プロローグ代わりの3通の手紙。
はじめは何のことを言っているのか、よくわからないまま読み進めていくことになるのですが、途中で龍麿と芙蓉のやりとりなのかと思ったのですが、実はそれだけではなくて。
最後に明らかになったことはあの人たちにとってとても辛いことだったのでしょう。
でもちゃんと乗り越えてくれるんだろうな。
再登場してくれることを願います。
次巻は短編集だったはず。
しかしながら、今巻(550ページ弱)よりも分厚いという、ちょっと規格外な分厚さです(笑)
また連休にでもならないと読むことはないと思うのですが、楽しみです。
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