ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ/アンジー・トーマス(訳/服部理佳)
少女の勇気が社会を動かす一歩になる!衝撃と感動の物語。
ギャングがはびこり、さまざまな問題を抱える黒人街ガーデン・ハイツ。そこに暮らす自分と、裕福な白人ばかりのウィリアムソン校に通う自分。
それぞれの世界での自分を仕立てて暮らしていた高校生・スターの日常は、ある夜一変してしまう。幼なじみのカリルが、白人警官によって射殺されてしまったのだ。スターの眼前で起こった恐ろしい事件は、まるで見えない力に歪められるかのように、真実とは異なって広まっていく。
悩み、怯えながらも、スターは立ち上がる覚悟を決める。
カリルの声となるために。
本が好き!を通じて出版社さんから頂戴しました。
本当にすさまじかったです。
物語の舞台は帯にある通り、黒人街ガーデン・ハイツ。
そこに暮らす16歳の黒人の少女・スターは嫌々ながら誘われたパーティに参加しました。まさかあんなことが起こるとは思わずに。
パーティで偶然再会したちょっと疎遠になっていた幼なじみ・カリルと帰宅しようと車を走らせていたところ、パトカーに呼び止められてしまいます。
それだけで済めばよかったのですが、白人警官はスターに「大丈夫か」と声をかけようとしたカリルを射殺してしまうのです。
そうこの物語は、死人に口なしとばかりに歪んで伝えられてしまうカリルを、カリルの正義を守るために声をあげた少女の物語なのです。
正直、気軽な気持ちで読み始めたことを後悔しました。
ドラッグや銃、暴動が起きて云々といった問題は日本で暮らしていては正直ピンとくるものではありません。
白人と黒人の間にわだかまる人種差別問題も、こういってはなんですが遠い世界のお話でしかありませんでした。
それでもスターは友達や恋人との関係に悩み、複雑な兄弟関係にも思うところのある等身大の16歳の少女です。
そんな少女が、傷を抱えながら、新たに傷つきながらそれでも立ち上がり声をあげる様は涙で文字が歪んで読めなくなったり、読み進めることがつらくなりページを閉じてしまったりと中々読み進めるのが辛い本でした。
470ページほどあり、普通の本より一回り二回り大きいサイズの本なのでそこそこ長く文量のある本ではありますが、けして読みにくいわけではないんです。
それでも読み終えるのに一日半ほどかかってしまいました。
スターの頑張りもむなしく、カリルを射殺した警察官が罪に問われることはありませんでした。
そこが妙にリアルで、実際そうなってしまうのでしょうが、せめて物語の中でぐらいうまくいっても良かったんじゃないのかな、と。
でもリアルだからこそこの本が全米でベストセラーになり、映画化も決まったのかなとも思います。
これが一種の問題提起として生きてくるといいのですが。
読んでいる途中は、辛かったものの読み終えた今はとてもすっきりしています。
スターは確か辛い経験をしていますが、それでも家族にも友人にも恵まれているので、彼女はこの経験を乗り越えてさらに成長していくのが語るまでもなくわかるからかもしれません。
本当に読んで良かったです。
[3回]
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