お師匠さま、整いました!/泉ゆたか
享保十一年、茅ケ崎は浄見寺。
今は亡き夫の跡を継ぎ、桃は寺子屋で子供たち相手に師匠をして暮らしている。ある日、酒匂川の氾濫で両親を亡くした春が訪ねてくる。
すでに大人の身でありながら、もう一度学問を学び直したいという。はじめは戸惑っていた桃だったが、春の素直さと見え隠れする才能に次第に魅せられていく。
しかし、寺子屋一秀才な生意気娘・鈴が黙っているはずがなく……。
爽やかでほんのり温かい、"時代×お仕事"エンターテイメント!
見守り、育ててくれる人がいる。そのぬくもりを、幸せを、あなたはきっと思い出す。
算術も、子育ても、色恋沙汰も私にまるっとまかせなさい!
可愛らしい表紙イラストにひかれて図書館で借りてきました。
ちなみに装画はMinoruさんとのこと。
物語の主人公はお江戸の寺子屋で算数や文字の読み書きを教える"お師匠さま"である桃。
夫の仕事を手伝い、夫である数学者・清道が亡くなったあともそれを続けていました。
そんな桃の寺子屋に、とうに寺子屋を卒業している娘・お春がやってきて学び直したいと言い出して。
お春と数学の才がある少女・お鈴、桃の三人はそれぞれ数学にかかわっていくことになるが――。
といったところ。
この作者さん、見たことない方だなーと思っていたらどうもこの作品で第十一回小説現代長編小説新人賞を受賞され、この作品でデビューされたのだとか。
道理で見たことがないわけですね。
清道によって大事に、可愛がられていた桃。
しかしながら、「お桃さま」と称され仲間内に自分亡き後のことを頼まれていたなんて、プライドの高そうな桃からしたら憤慨ものですね。
お鈴の質問やら難題やらをボロが出ないように答えていく様は、中々に愉快です。
清道に見初められた経緯を思うに桃自体とても要領がいいというか地頭はいいのでしょう。
それでも、今でいう小学校の算数を教えていた桃にとって、自らも習ったことのない中学高校あるいはそれ以上の数学を教えるというのは手に余るというもの。
最終的に、自らの手元からお鈴を手放した時には驚くと同時にすごく成長したな、と。
数学には苦手意識のある身としては途中の説明を半ば読み飛ばしてしまったのですが、中々に面白かったです。
序盤から秋波を寄せていた平助と結ばれてめでたしめでたしと。
まあ、交合交合言い過ぎな気もしましたが(笑)
前述の通り、これが作者さんのデビュー作。
これがシリーズ化するのか、それとも全然違う作品を描かれるのか。楽しみです。
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