聖エセルドレダ女学院の殺人/ジュリー・ベリー(訳/神林美和)
十代の少女7人が在籍する小規模な寄宿学校で、ある日の夕食中、校長先生とその弟が突然息絶えてしまう。それぞれの事情から家族の元へ帰されたくない生徒たちは、敷地内に死体を埋め、事実を隠して学校生活を続けることにする。翌日、科学の得意なルイーズの分析により、ふたりは毒殺されたと判明。生徒たちは得意分野を活かして大人の目をあざむきつつ犯人を探り始めるが……。
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本が好き!さんを通じて東京創元社さんから頂戴しました。
実は昨年末に登録していたのですが、本が好き!については後日、別記事で解説しますね。
物語の舞台は1890年イングランドにあるとある寄宿学校。
そこで校長とその弟がなくなってしまいます。
少女たちは大人たちにそのことを告げず2人の死を隠蔽し、学校生活を続けようと奮闘する様が描かれています。
メインとなる登場人物は女学院の生徒たち、『機転のキティ』『奔放すぎるメリー・ジェーン』『愛すべきロバータ』『ぼんやりマーサ』『たくましいアリス』『陰気なエリナ』『あばたのルイーズ』の7人。
それに+αで多くのキャラクターが登場します。
たくさんのキャラクターが一度に登場すると混乱してしまうのですが、本編開始前に【この物語に登場しない、少女たちの親戚及び知人たち】という項で彼女らについて語られ、さらに特徴をとらえた呼び名が最初から提示されているのもだいぶわかりやすかったです。
カバーの折り返しにも簡単な登場人物紹介がのっているのもいい感じ。
創元推理文庫から発売されていて、タイトルにも殺人なんてついているものだから、ミステリーを連想してしまう方が多いと思いますが、ミステリーだと思って読み始めると肩すかしを食らうかもしれません。
校長たちは毒によって殺されていますし、作中で犯人探しも行われていますから一応はミステリーなんでしょう。
ですが、犯人探しよりも彼女たちがいかにして大人たちの目を欺き続けるかという方が主題に思えてなりませんでした。
嘘に嘘を重ねて、無理のある行動を続ける彼女たちは、薄氷を踏むどころかその上で優雅にダンスなんか始めちゃったりして読んでいるこっちはとてもハラハラさせられました。
作中、勇気と無謀をはき違えた行動にどことなく、海外YAっぽいなーと思いつつも海外作品を読むことはほとんどないので私の気のせいかも?なんて思って読み進めていました。
が、大矢博子さんの解説を読んで納得しました。
それというのも、この物語元々は児童書として発表されたもののようなんです。
それが日本に入ったらいきなり一般書扱いされたのかはわかりませんが、私の感じた海外YAっぽさは間違いじゃなかったんだなと(笑)
物語の終わりのあっけなさには逆に驚きました。
彼女たちが幸せに暮らせることはいいことだけれども、それでいいのか、と。
彼女たちが犯した罪をなかったことに出来てしまうのも時代のせいなのかな?なんて考えてしまいました。
色々と思うところはありましたが、楽しめました。
東京創元社さん、本が好き!さん双方ともにありがとうございました。
実はもうすでに次の本を頂いているのでそちらも読み進めなければ(汗)
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