月光ゲーム Yの悲劇'88/有栖川有栖
夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々――江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。
矢吹山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、一瞬にして陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状態の中、まるで月の魔力に誘われでもしたように出没する殺人鬼。その魔の手にかかり、ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく……。いったい犯人は誰なのか?
そして、現場に遺されたyの意味するものは何? 平成のエラリー・クイーン=有栖川有栖の記念すべきデビュー長編。
2010年の8月に購入し、ずっと本棚のこやしになっていたのですが、ようやく読む機会に恵まれました!
実はちょっと前に読み終わっていたのですが、感想書くのも遅くなってしまいました。
物語の舞台はとある火山のキャンプ場。
火山とはいえ、小さな噴火が10年前に起きたっきりで大きな噴火は200年ほどさかのぼらなければならないというふれこみでした。
ある意味、穴場ともいえるキャンプ場で若者たちがキャンプを楽しむ中、前兆などなかった火山の噴火し山をおりることも出来なくなってしまいます。
そんな偶然出来たクローズドサークルの中で殺人事件が起こり、若者たちは犯人探しと下山のための手段を求めて奔走する様が描かれています。
サブタイトルにもある通り、作中時間軸は1988年――ギリギリ昭和のころの物語なので正直、今読むとちょっと違和感を感じる点もあります。
私が持っているのが初版なのでそのせいもあるのかもしれませんが、今じゃ二人称としての「おたく」ってもうあまり使わないです。
フィルムカメラやカセットテープの使い方の知らない世代も増えていることでしょう。
その世代にとっては今作は読んでも理解が出来ない代物かもしれませんが、こればっかりは仕方ないのかな。
正直、私は仕組みというか、「そういうものだ」ということは知っていますが、フィルムのセットは出来ないです、多分。
クローズドサークルにダイイングメッセージに、とミステリー好きの琴線をくすぐるものがこれでもかと散りばめられています。
少しばかり粗削りというか乱暴な印象もありましたが、事件的には突発的でありながらも不可解で、読後はなんだか物悲しい。
とはいえ、登場人物が多くて結構困ってしまいました。
探偵役の江神部長、語り部の有栖川有栖たち英都大推理研面子だけで4人。
その他学生たちがあわせて15人以上ともなるとキャラクター像が固まりきらないまま物語が進んでしまった感はありました。
ミステリーですから、一部例外もありますが基本的には最終的には犯人が暴かれるわけです。
ですが、この物語に関していえば謎解き後のあれやこれやが悲しくて微妙な気分になりました。
今まで、江神シリーズというか学生アリスシリーズは、火村シリーズと表裏一体であるという設定しか知らずにいたのですが、勿体ないことしたなーと。
もっと早く読んでいれば良かったと思います。
今回、3巻――『双頭の悪魔』まで一気読みしたので近いうちに感想もあげたいと思います。
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