ぬしさまへ/畠中恵
きょうも元気に(?)寝込んでいる、若だんな一太郎の周囲には妖怪がいっぱい。おまけに難事件もめいっぱい。幼なじみの栄吉の饅頭を食べたご隠居が死んでしまったり、新品の布団から泣き声が聞こえたり……。
でも、こんなときこそ冴える若だんなの名推理。ちょっとトボケた妖怪たちも手下となって大活躍。ついでに手代の仁吉の意外な想い人まで発覚して、シリーズ第二弾、ますます快調。
しゃばけシリーズ2作目にして短編集です。
……ごめんなさい!シリーズ1作目をとっくに紹介していたものだと思っていました(焦)
畠中恵さんの作品を紹介していた覚えはあったのでぬしさまへを手に取ったのですが、
つくもがみ貸しますと勘違いしていたようです(- -;)
今からしゃばけを読もうにも今日中に紹介するってのは難しいものがあるので今日はぬしさまへの感想をば。
創竜伝だとか少年陰陽師だとかもシリーズ途中からの紹介ですから問題ないのかもしれませんが。
6篇が収録されています。
シリーズ2作目にして若だんな以外がメインの作品がいくつもあってちょっと驚きました。
普通しばらくは主人公から離れないもんなんですけどね。
『ぬしさまへ』
表題作。
仁吉のもとに届いた付け文の話。
付け文ってようはラブレターってことですよね?
それを若だんなの暇つぶしの道具にするってどうなんだ……。
今とは感覚やなんかが違うのかもしれませんけど、うーん。
おくめが凄い嫌な娘でした。
火事を知らせる半鐘の音を耳にして笑ったおくめの顔はひどく醜いものだったんだろうな、と思います。
『栄吉の菓子』
栄吉さんの菓子を食べたご隠居が死ぬ話。
いや、それだと御幣がありますね。
タイミングが悪かっただけで、栄吉さんのお菓子は確かに不味いですけどポイズンクッキング(by家庭教師ヒットマンREBORN!)みたいなことじゃありません。
栄吉さんが非常に可哀想でした。
ご隠居の最後の賭博に巻き込まれるかたちになってしまったわけですけど、ご隠居も栄吉さんを巻き込みたくなかっただろうに。
何度も文句を言いながら栄吉さんのお菓子を買って会話して……。
孫みたいな年齢の栄吉との会話は楽しいものだったんでしょうね。
『空のビードロ』
前作しゃばけの舞台裏というか松之助さんサイドの話。
松之助さんというのは若だんなの腹違いのお兄さん。
おりんが若だんなに近づく前に店を出ていて本当によかったな、と思いました。
もしおりんが若だんなに近づこうとしても門前払いを食らったと思うんですよね。
手代たちも両親もよしとしなかったでしょうから。
相手にされないことにおりんは憤って松之助さんにつらくあたるだろうってのは予想できますし。
ぎりぎりのところで踏みとどまれた松之助さん。踏みとどまる理由になったのが若だんなの落し物ってところがすごくよかったです。
『四布の布団』
若だんなの新品の布団が泣き声をあげる話。
こう書くと怖いですね。まったく動じない若だんなはすごいな。
普通はお梅みたく逃げ出しますよね。
殴られるだけが恐怖じゃないんですよね。
“声”もまた暴力になりうる、と。
後日談的なものが読んでみたいなと思いました。
きっと繁盛するんだろうな。
『仁吉の思い人』
仁吉が若だんなに自身の過去を語る話。
「薬を飲んだご褒美に……」と言われて興味津々の若だんな。
若だんなにとって仁吉はふることはあってもふられることはないんでしょうね。
悲恋で終わるのかと思いきや、あっさり結末が語られてちょっとびっくりしました。
もう少しもったいつけても……。
最後の若だんなの疑問は確かに気になりました。
今もまだ好きなんですかね。
『虹を見し事』
若だんなが誰かの夢に紛れ込んでしまった話。
しゃばけシリーズの中でもかなり不思議な話になるのではないでしょうか。
なんだかややこしいな、と思っていたら2つの事柄が若だんなの身に降りかかっていたからなんですね。
どうりで印象が違いすぎるわけです。
若だんながいろいろ悩んでいるわけなんですが、きっと一人で抱え込んでしまうのでしょうね。
他人からみたら贅沢な若だんなの境遇は、当人からしたらすごく考えることが多いのでしょう。
なまじ頭がいいし、考える時間が多いから余計なのかもしれませんね。
誰かそういう若だんなの愚痴とか聞ける人がいたらいいんですけど。
全編を通して若だんなが愛されてます(笑)
なんというかすごいですね。
そして、やっぱり私は屏風のぞきが好きです。
明日もミステリーかなぁ、と思っているのですが何を読むかはまだ未定。
分厚いのでも読みたいな、とは思います。
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