神隠しの教室/山本悦子
私っちは、今、もうひとつの学校にいます。
そちらの学校とそっくりです。
でも、私たち以外はだれもいません。
神隠しなのかもしれません。
先生、教えてください。
私たちは、どうすれば帰れるんですか?
第55回野間児童文学賞受賞作
小学校で起きた、子どもたち5人の「神隠し」。
5人はいじめや家庭環境などに問題を抱えていた…。
「もう一つの学校」とは?謎が謎を呼ぶ、長編ミステリー!
図書館本。
380ページほどとそこそこ長い本なんですが、一気読みしてしまいました。
主人公というかメインの登場人物は表紙イラストの子どもたち。
ドアの影から体を出している黒髪ロングの少女・加奈、5年生。
その隣にいる背の高い少女がブラジル人のバネッサ。同じく5年生。
加奈と手をつないでいるツインテールの小さな女の子が1年生のみはるちゃん。
眼鏡の少年が4年生の亮太で、床に膝をついているのが最年長6年生の聖哉。
この5人がふとした瞬間に"もうひとつの学校"に閉じ込められてしまい、帰るすべを探すお話。
ミステリーと銘打たれてますが、一見するとホラーかもしれません。
誰もいない学校、あることを思いだすと現れるものたち。
要素だけ見るとちょっと怖い。
それでもあまり怖さを感じないのは、子どもたちがたくましくそれぞれ知恵をだしあって過ごしているからかもしれません。
無印デジモンしかり、十五少年漂流記しかり、無人惑星サヴァイヴしかりそういう話大好きなので読んでいて楽しかったです(笑)
「だって、そりゃあ、あなた、昔から古いものに、魂が宿るのは当然のことじゃないですか。」
「『思い』とでも言い直した方がいいかな。ぼくはね、隠れ家があると思うんです。学校自身が作り上げた」
「校舎は、私たち教員より長く、子どもたちを見ているんです。それこそ、あらゆる場面を目の当たりにしている。そんな校舎が、子どもたちのピンチに手を差し伸べたくなるのは当然でしょう。自分の中の隠れ家に子どもたちを引き入れて守ろうとしたって、なんら不思議はないと思いませんか?」
(p256~257)
定年間近だという川島先生の言葉です。
それぞれに問題を抱える彼ら。
いじめだったり家庭の問題だったりと自分自身でどうにか出来ることもあれば出来ないこともあるのですが、それでも彼ら心持が変わり自身の力で問題を乗り越えていく決意を固める様は見ていて心地いい。
仮校舎が建設中で、もう少しで最後を迎えることが決まっていた校舎。
多くの生徒を隠し助けてきた校舎が最後に助けることを選んだ子どもたちが校舎の助けを借りて成長できたのは本当に良かったな、と。
最後の展開はなんとなく読めてしまいましたけど、最悪の展開もありえると思っていたのでそうはならなかっただけ本当に良かったです。
[16回]
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