原罪の庭 建築 探偵桜井京介の事件簿/篠田真由美
ガラスの柩を思わせる巨大な温室の中で惨殺された病院長一家。その血塗られた密室に置かれたチェストで、天使のようにまどろむ七歳の少年。ただ一人生き残った彼は、し かし言葉を失っていた。闇に閉ざされた魂を救うため、最大の謎「薬師寺家事件」に挑む桜井京介。建築探偵シリーズ第一部の掉尾を飾る傑作。
結構久しぶりの桜井京介シリーズです。
だいぶ間があきましたね。
篠田さんの作品はおもしろいんで一気に読めるのですが、何分長いので時間のある休みの日にしか読めないんですよ。
今回は今まで謎に包まれていた蒼の話です。
大学という舞台において、彼だけが一人異色で、登校拒否だからとあそこにいる理由を説明され、壮絶な過去があるだろうことが仄めかされていた蒼の過去が明かされます。
時間軸は
灰色の砦から半年後くらいかな。
今回、深春は登場しませんし、蒼が事件の渦中の人物として登場するため今回の語り部は神代教授です。
深春がいないのは輝額荘事件後に旅に出てしまったからなんですが、京介は事件を暴いていくうちにさらに死者を出してしまったことにショックを受けて精神的にやられている状態からスター トします。
神代教授と京介が三年前の薬師寺家事件に関わることになったのは、その生き残りである香澄とその叔母・かおるに取材をしたいという女性が現れるから。
その仲介役をこなさなければならなくなった神代教授は否応なく事件の真相について考えることを余儀なくされます。
事件の概要はとても酷いものでした。
事件自体も惨殺死体と言っていいほど酷いものなんです。
でもそれと同じかそれ以上に、香澄の置かれていた状況が酷い。
今回読むのは2回目なんですが、何度読んでもこれは辛い。
事件自体も辛いものなので、余計ですね。
唯一の救いはずっと止まっていた香澄の時間が蒼として動き出したこと。
エピローグを読むと、蒼の成長っぷりがすごくて良かったねと言ってあげたくなります。
が、その一方で京介の独白であるエピローグ3はすごい意味深。
蒼の成長を喜ぶ一方でいつまでも蒼を両手で囲って護っていられるのもあと数年だと。
そして訪れるであろう別離とは……。先日最終巻が発売されてましたが、文庫派の私がそこにたどり着くまでにはあと数年はかかりますね。
楽しみにしていたいと思います。
ちょっと気になったこと。
前回も今回も読み終えたときは特に気にならなかったのですが、しばらくして脳内でこの感想に何を書こうかなーとなんとなく考えていたんです。
そうしたら、ふと思い出して。
「蛇の腕輪」はどこにいったのでしょう?
“園梨々都”が贈った「蛇の腕輪」は事件現場に残されたものの対だという触れ込みで警察に贈られてきたんですよね?
しかし事件現場には腕輪はなかった。そして、今改めて確認してみたら“園梨々都”もあの人も腕輪については「自分のやったことだ」と明言してないんですよ。
凶器となったナイフは発見されました。
でも疑問は残ります。第三者の介入があったのでは?と思ってしまいますね。
そういう点があるから
Ave Mariaが書かれたのかな。
早く読みたいです。
でもシリーズを順番に読んでいっているので、まだしばらくかかるなぁ。
[1回]