絶叫城殺人事件/有栖川有栖
「NIGHT PROWLER(夜、うろつく者)」と記された小さな紙片を、口の中に押し込まれ、次々と殺害される若い女。残酷な無差別殺人事件の陰には、カルトなホラー・ゲームに登場するヴァーチャルな怪物が――。
暗鬱の「絶叫城」に展開する表題作ほか、「黒鳥亭」「壷中庵」「月宮殿」「雪華楼」「紅雨荘」と、底知れぬ恐怖を孕んで闇に聳える六つの迷宮の謎に、火村とアリスのコンビが挑む。
有栖川さんの作品って結構久しぶりな気がしたんですが、実は1月ぶりくらいなんですね。
月に1冊か2冊のペースなので特段久しぶりってわけじゃなかったようです。
『黒鳥亭殺人事件』
昔の友人の住む家「黒鳥亭」の裏にある井戸で男の死体が発見された話。
冒頭の「火村ときてくれないか」に思わず笑ってしまいました。
火村先生とアリスはセット扱いなんだなぁ、と。
“天使”の無邪気さが可愛らしかっただけに事件の後味はちょっと悪いかな。
こういうのって傷害致死になってしまうのでしょうか……。
少女がもう少し馬鹿で、真似することも思いつかないくらいだったらよかったのに、と思ってしまいました。
『壷中庵殺人事件』
壷のような地下の部屋で主が壷をかぶって死んでいるのが見つかる話。
なんとも奇妙な事件でした。
トリック自体はなんとなくではありましたが、予想できました。
壷の意味まではわかりませんでしたけど。
地下の部屋であるからこそ出来るトリックですね。
『月宮殿殺人事件』
ホームレスの男が建てた家が放火され男が死んでしまう話。
これはちょっと異色作なのかも。
犯人もわかっていて犯行方法もわかっている。
分からないのは「なぜ男は燃えさかる家に飛び込んでいったか?」ってこと。
アリスから見た描写を読む、ってこと自体がミスディレクションなんですよね。
そういう知識を持っていたとしても中々分からなかったのではないでしょうか。
『雪華楼殺人事件』
建築途中で放置されているホテルで起きた不幸な事件の話。
確かに論理的に考えれば、それしか答えがないのかもしれません。
でも中々そんなこと信じられないというか。
まさかそんなこと起きてたまるか、とこの話を読み終えた後思ったのです。
が、実際に同じような事件が起きたことがあるんだとか。
びっくりです。
『紅雨荘殺人事件』
紅雨荘なる屋敷で、女主人が殺されているのが見つかる話。
「男ですから泣きませんよ」に黙ってしまったアリスが可愛かったです。
アリスは泣いてしまいましたからね(笑)
指紋については見当がついていたのですが、私はそれだけを移動させたのかと思っていたのです。
でもそういうわけじゃなかったのですね。
犯人よりも工作をした方にイラっとしてしまいました。
『絶叫城殺人事件』
連続無差別殺人が起こる話。
表題作です。
ホラーゲームに登場する怪物を名乗る犯行が続き、警察が批判され……って話。
途中登場するゲーム会社の人の話に思わず「まったくだ」と頷いてしまいました。
残虐な事件が起きるとゲームや漫画のせいにされることが多いが、それはおかしい。
殺人シーンが多いのは何もゲームや漫画に限ったことではなく、オペラや時代劇だって殺人シーンはある。
そういう作品の真似をした事件が起きてもその作品を排除しようとする動きは起きないだろう。
ごくごく稀にしか存在しない、ゲームを真似て人を殺す人物を想定してゲームを作ることは出来ない。
『オペラ作品○○』は良くて『ゲーム××』はダメなんて判断を下す権利は誰にもない。
要約するとこんな感じ。
本当にその通りです。
物語自体も緊迫がありとてもおもしろかったのですが、最後に犯人がいったことがひどく印象に残りました。
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