ミッドナイト・アサシン アメリカ犯罪史上初の未解決連続殺人(シリアルキラー)事件/スキップ・ホランズワース(訳/松田和也)
19世紀、希望と活力に満ち溢れた発展途上のテキサス州オースティンの街で、連続殺人事件が起きた。当初狙われていたのは、黒人や移民の女中たちだった。その犯行は大 胆で残虐、ターゲットだけを確実に仕留めた。だが、顔を見た目撃者は皆無で、黒人なのか白人なのかも不明だった。犯人はいった何者なのか? その儀式的な殺人行為に意味はあるの か? 何人もの容疑者が拘束されたが、殺人がやむことはなかった。誤認逮捕を恐れた黒人は街から逃げだし、女性たちは怯え、武装する市民たちも現れた。市長や警察官は業を煮やし た――やがて、白人女性にまで犯行が及ぶと、市民のパニックと恐怖は頂点に達する。果たしてこの街の運命は――?
本が好き!さんを通じて出版社さんからご恵贈いただきました。
普段ノンフィクションなんて読まないので新鮮でした。
舞台は1880年代。開拓が進んだものの、まだ西部の片田舎であったオースティンが大きく発展しようとしている時でした。
そんな街で起きたいくつかの事件についてこの作品では詳しく書かれています。
当時はまだ科学捜査なんてものは全くなかったそうですし、それどころかシリアルキラーやサイコパスといった存在も認識されていなかったのだとか。
殺人が起きたとしても、それは物取りや怨恨、喧嘩の際に勢い余ってなどの比較的わかりやすい動機のものしかなく、だれか彼か目撃者がいた、ためすぐに犯人を捕まえることができた のだとか。
それゆえに、この事件ははじめから暗礁に乗り上げてしまいます。
目撃者はいても犯人の姿かたちをきちんととらえているものはいない、動機があるような容疑者にはアリバイがあり犯行が不可能。
はじめ襲われたのは黒人の女中でした。 そこから黒人の少女、さらには白人の女性(しかも上流階級の妻)へと犯行は徐々に過激さを増していきます。
はじめは襲われただけだったのに、惨殺といっていいような殺され方をするようになるのですからそれだけでも恐ろしい。
それだけ恐ろしい殺人鬼でしたが、今の世ではほとんど知られていません。
ほぼ同時期に発生し、オースティンの殺人鬼が移動したのでは?といわれたロンドンの切り裂きジャックが今の世でも広く知られ創作の道具になっているのにも関わらず、です。
オースティンの殺人鬼――ミッドナイト・アサシンの噂が人の口にあがらなかったのは、何故なのだろうかとちょっと考えてしまいました。
素人考えなのですが、ただただ誰が殺されるかわからなかったからではないかと思いました。
「噂をすれば影がさす」とでもいいましょうか。
切り裂きジャックの被害者は娼婦に限られていたのに対して、ミッドナイト・アサシンの被害者たちの共通点は女性であることぐらいしかありません。
(黒人男性も死亡していますが、これは力加減を誤ったがゆえの死亡のようなので除外します)
いつ自分が、自分の家族が殺されるかわからない。
そんな状況で自ら悪魔を呼び込みたくはなかったのではなかったのかな、なんて思ってしまいました。
普段フィクションばかり読んでる人間からすると、犯人の正体が最後まで不明というのは少しもやっとしたものが残るのですが、こればっかりは仕方ないですね。
たまにはこういうものを読むのも面白いですね。
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