暗黒女子/ 秋吉理香子
今日のテーマは"いつみの死"です
この中にいる。いつみを殺した犯人が――
ある女子校で、一番美しく一番カリスマ性のある女生徒が死んだ。
その一週間五、親しかった六人が部室で語り出す、
彼女の死の真相とは?
図書館で借りてきました。
初めて読む作家さんですが、タイトルにひかれて借りてきました。
物語は帯にもある通り、いつみこと白石いつみの死についての話です。
白石いつみはこの学校のカリスマで経営者の娘。麗人で完璧な少女だったんだとか。
そんないつみがテラスから転落しすずらんの花を握って死んでいるのが発見された。
その1週間後からこの物語は始まります。
彼女が会長をつとめていた文芸サークルのメンバーたちが定例会の中で闇鍋をしながら小説を朗読するという形で、それぞれ視点の「いつみを殺した犯人」を指摘していきます。
【1.開会のごあいさつ及び闇鍋ルールの説明】会長澄川小百合
【2.朗読小説「居場所」】1年A組二谷美礼
【3.朗読小説「マカロナージュ」】2年B組小南あかね
【4.朗読小説「春のバルカン」】留学生ディアナ・デチェヴァ
【5.朗読小説「ラミアーの宴」】3年B組古賀園子
【6.朗読小説「天空神の去勢」】2年C組高岡志夜
【7.朗読小説「死者の呟き」】会長澄川小百合
【8.閉会のごあいさつ】会長澄川小百合
という構成で物語は進んでいきます。
開会と閉会に関しては小説の朗読ではありませんが、小百合が他のメンバーに語りかけるという体をとっています。
そして、1人ずつ順番に小説を読んでいき犯人を名指ししていきます。そして小百合の総評が入り次の語り手と移る、と。
冒頭からグイグイひきこまれてしまいました。
徐々に真相に近づいていくのかな?と思いきや、1人目の朗読でいきなり犯人が名指しされてしまい驚き、次の朗読では別の人物が犯人として名指しされている……。
読んでいて混乱してしまいました。
美礼→園子→ディアナ→志夜→みなみ→美礼
と、
【6】まで読むと上のように矢印が一周してしまうんですね。
大いに矛盾をはらんでいるものの、死人に口なし。
一部は今でも確認できそうなものではありますが、もう何が真相か分からなくなってしまうんです。
が、そうは簡単に終わりません。
【7】はタイトルからも推測できる通り、死んだはずのいつみ視点の物語。
なぜ、そんなものが都合よく残っているのか疑問に思いつつ読み進めていくとなるほど、と。
悪女というか、支配者であったはずのいつみの降板、主役交代の一幕は非常に不気味でした。
正直、開幕の時点から冷静に、穏和に語りかけているんだけれど、だからこそ怖いというか。
そんな印象を受けていただけにやっぱりな、と思う一方で女って怖い、と。
「女生徒たちはきりきりと主導権という糸を引っ張り合っています。(中略)そしてその力関係は、日々、いえ、数時間ごとに変化する、めまぐるしいものなのです。ついさっきまで輪の 中心にいた人物が、なぜだかランチの時間が終わると疎外されている。その逆だって頻繁に起こりえます。」(p120~121)
作中で留学生のディアナが書いた小説からの引用ですが、まさにこういうことだったのだな、と。
別次元の存在であったいつみは、そういった争いには関係していなかった。
けれど、彼女は女子校という花園から退場することで、高みから転落してしまったということなのでしょうね。
おもしろかったです。
皆、それぞれいつみの握っていたすずらんに意味を持たせているんですが、みんな違うものを指しているんですね。
すずらん一つでよくもまあそんなに思いつくな、と。
作家さんってすごい。
不気味で怖い上、仄めかす程度ですがカニバリズムだよなこれっていう表現もあるので、嫌な人には嫌な作品かもしれません。
でも気持ち悪くはないですね。さらりと読めます。
こういうのがイヤミスっていうんですね。
帯の書店員さんの言葉でこれがイヤミスに該当するって知りました。
そうかこれがイヤミスかーとちょっと感動(笑)
今回私は晴天の真っ昼間に読んでしまったんですが、この作品は嵐の夜中……は無理だとしても曇天の日に読みたい作品だな、と思いました。
[3回]